日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■太陰暦の日付と月の呼び名 (その2)
昨日は、太陰暦の26日に当たる9/14(2009年の)に昇る月を
二十六夜月
というと、困った問題が起こるというところで話を終えました。
なにが「困った問題」だったか考えてくださいましたか?
◇二十六夜月の問題
太陰暦26日の日に昇った月をそのまま「二十六夜月」とすると困る問題、そ
れはその月が朔(新月)から数えて何番目の月かという問題です。
ある月を眺めていて「次の日の月」といった場合私たちはどんな風に月を数
えるでしょうか。おそらく多くの方は今見ている月が沈んで、次に昇ってき
た月を次の日の月と考えるのではないかと思います。
太陽にせよ星にせよみな、昇っては沈み、沈んでは再び昇るという動きを続
けますからこの「昇っては沈み」というサイクルを
1,2,3,・・・
と数えるのが普通だと思います。
月を朔を 1としてこの方法で数えると、三日月は 3番目の月、十五夜月は15
番目の月ということになります。こう数えてゆけば、三日月の「三」や十五
夜の「十五」という数字も大変にわかりやすい。
ところが、昨日例に引いた太陰暦26に当たる9/14に昇る月は、この数え方で
は26番目ではなくて25番目の月ということになってしまいます。
この辺りの関係をよく見てみましょう。 9/3の十五夜を朔から数えて15番目
の月として順に「月の数」を数えると
15番目 (9/03 17:29〜9/04 04:52 旧暦 7/15)
16番目 (9/04 17:55〜9/05 05:50 旧暦 7/16)
(略)
24番目 (9/12 22:55〜9/13 14:06 旧暦 7/24)←旧暦日に注目
25番目 (9/14 00:02〜9/14 14:57 旧暦 7/26)←旧暦日に注目
26番目 (9/15 01:14〜9/15 15:40 旧暦 7/27)
()内の日付と時刻は月の出没の日時、最後が旧暦の日付です。出没時刻の
計算地は京都、日付の年は西暦の2009年です。
太陰暦の日付 = 月の名前
と考えるとすると太陰暦の一種である旧暦の26日に昇る月はこの例では9/14
0:02に昇る月となりますが、この月は「昇って沈むで 1サイクル」という単
純な月の数え方では25番目になってしまいます。「旧暦の日付」をごり押し
すれば月の呼び名は
二十四夜月の次は二十六夜月
と一つ跳んでしまうことになります。
これはちょっと受け入れがたいところですね。どう考えても「常識はずれ」
です。さすがにこんなことはなくて、やはり二十四夜の次は二十五夜、二十
六夜と順に数えてゆきます。だとすると二十六夜月とは、旧暦日に連動した
名前とではなく朔から数えて26番目の月と考えるのが良さそうです。
◇旧暦日と月名のずれの生まれる理由
この理由は単純に考えれば、「月は一日に平均して50分程ずつ月の出が遅れ
る」ために起こる現象ですがもう一つは、太陽を基準とした一日と月を基準
とした一日の区切りの違いにあるのかもしれません。
太陽を基準とした一日は太陽の南中である正午(とその反対側の正子)を区
切りとして数えますが、月を基準とする日の数え方は月の見える「夜」を数
えることのようです。
旧暦日も太陰暦の日付といいながら「一日」の単位は基本的には太陽に基づ
いた区切り方をしているため、太陰暦の日付そのものを直接月の名前に与え
ると今回の話のような矛盾が生じるのですが、三日月も十五夜の月も二十六
夜月にしてもその月が見える「夜」を数えれば何もおかしなことは起こりま
せん。
月の名前は、朔の日から数えた日の数ではなくて、朔の日から数えた夜の数。
だから十五夜の月であり、二十六夜の月なのでしょう。
二十六夜の月とは、いつ昇る月なんですか
といった質問(月の数は26ばかりではありませんが)を時折頂くことがあり
ますが、「夜の数を数える」と考えると悩むことは無いようです。
長い説明になりましたが、結論はといえば、あたりまえといえばあたりまえ
過ぎる「月の名前の話」でした。
◇朔日の月、晦日の月の話し
朔日の月、晦日の月の話しも考えるとまた面白いと思うのですが、長くなり
すぎますのでこちらの話はまたいずれ、何処かで思い出したときに書こうと
思います。
どんな話しかは、皆さんのご想像にお任せします。もちろんその「想像」と
同じ話になるかは保証出来ませんけれど。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.sp@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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