日刊☆こよみのページ スクラップブック
(PV , since 2008/7/8)
■ちょっと日食の話
今日の暦とは何の関わりもありませんが、今日はいきなり日食の話です。
Web こよみのページの掲示板に書き込まれた質問への答えを書いているとき
に、
これって日食についてのよくある誤解の一つだな
と気づいたので、どうせならこの日食の話を一般常識としてここに書いてし
まおう考えた次第。
土曜日の朝の息抜きにでもお読み下さい。
◇それは一つの書き込みから
Web こよみのページの掲示板に次のような書き込みが有りました。
-------- 掲示板に書かれた内容(※)----------
2009年に日食が有りましたよね。たしか46年ぶりとか。
でも46歳より若い私の母は日食を見たことがあるらしいのです。
これっておかしくないですか?
教えてください。(*^_^*)
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(※)原文どおりではありません。大意はそのまま、内容がはっきり分かる
よう書き直させて頂きました。
2009年の日食といえば、日本中(?)が大騒ぎしたトカラ列島付近で皆既日
食となった日食のことだと思います。確かあの日食は
46年ぶりの皆既日食
といった具合に紹介されていました。普段は天文現象など採り上げることの
ないTVのワイドショウなどまで、浮かれたようにこの「皆既日食」を採り上
げていましたが、その採り上げ方がおかしかったためか、「おかしな誤解」
も沢山ありました。
◇日本全国、「皆既日食」?
おかしな報道といえばこんなものがありました。
(東京での街頭インタビューで)
問: 今日の皆既日食はご覧になる予定ですか
答: はい、職場から眺めようと思います。晴れるといいですね。
といった具合です。全然間違いとは云えないですが、なんだか変です。どの
辺がおかしいと思いますか?
確かに2009/7の日食は「皆既日食」ですが、だからといって日本の全国で皆
既日食が観測(観望、見物・・・)が出来る訳ではありません。東京で見る
と云うことであれば、そこで見られる日食は単なる部分日食です。
日食の予報計算などする場合はまず、
1.地球全体で見た場合、日食が起こるか
2.地球全体で見た場合の日食タイプは皆既・金環・金環皆既・部分のどれ
3.地球上の各地でどのように見えるか
といった手順で計算が進みます。2009/7の日食は 2の地球全体で見たときに
は間違いなく「皆既日食」ですが、それは地球の何処かに皆既日食帯と呼ば
れる皆既日食の見られる細い帯が出来るというということであって、何処で
でも皆既日食が見られるわけではなく、皆既日食帯以外の地域で見れば、た
だの部分日食に過ぎないのです。
ちなみに2009/7の皆既日食の皆既日食帯の幅は約 250kmと、皆既日食帯とし
ては広い方ですが、全周40000km もある地球表面の 250kmの帯ですから、地
球全体で見たら、随分狭い範囲でしかないことが分かります。
こうしたことを考え合わせて2009/7の日食について表現すると
A.日本国内(の陸域)を皆既日食帯が通過する46年ぶりの日食・・・○
B.東京で皆既日食が見られる・・・△(かなり×に近い△)
C.東京で見られる46年ぶりの日食・・・×
となります。
A の46年前は北海道の苫小牧−網走辺りで皆既日食が見られました。
B の△は「皆既日食」という言葉を「地球全体で見た場合の皆既日食という
分類に当てはまる日食」という意味でかろうじて誤りでは無いと言うこと。
よって、限りなく×に近い△。
普通の人が「皆既日食が見える」と聞いたときに思い浮かべるであろう、あ
のコロナが広がる皆既日食風景が東京で見えるわけでは有りません。
今回の話の始まりとなった掲示板へ質問はどうやら、C の意味だったと思い
ますので、これは明らかに間違い。東京ででは2004/10 も、2002/6にも見え
ましたし、西日本ではですが、今年2010/1にも見ることが出来ました。
部分日食まで考えれば、日食ってそんなに珍しい現象では無いのです。
質問者のお母様が46歳より若くても、日食を見たことが有るというのは全然
おかしな話では有りません。
◇日食はどれくらい起こっている?
日食は地球全体で考えたときには、実は月食より数多く起こる現象で、理論
的には最大で年に 5回の日食が起こりえます(沢山起こるときはほとんどが
部分日食)。
或る場所に限定すれば日食は数年に一度の現象ですが、地球全体で考えると
日食のない年というのは有りません。
今年2010は、 1月と 7月に日食が起こります。地球全体で見ると 1月は金環
食で、 7月は皆既日食です。日本ではというと 1月の日食は西日本では部分
食状態の日食が見えました( 7月の日食は見えません)。
ちなみに、2012/5には日本全国で日食が見られます。
この日食は金環食で金環食帯が京都−東京を含む日本の多くの地域を縦断し
ます。今から楽しみですね。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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