こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■旧暦月の大小の決まり?
 こよみのページにはいろいろな質問のメールが届きますが、最近こんなメー
 ルを頂きました。

  Subject: 素朴な疑問です
  素朴な疑問とは、旧暦の大小についてです。
  とかくと、大げさですが、今度の旧暦の7月小の月となっています。
  これは単なる帳尻合わせ?って言ったら失礼になるけど、
  どうしてなんでしょうか?
  たまたま気づいたことで、今までにもあったのかも知れませんね。
  理由を教えていただければありがたいです。
 (メールより必要部分のみ抜粋)

 このメールを最初に読んだ時には、「何のことだろう?」と首を捻りました。
 今年の旧暦の 7月が小の月だと云うことの何処が「疑問」に思われるのかな
 と首を捻ってしまったのでした。

 メールをくださった方の真意は不明ですが、もしかすると現在私たちが慣れ
 親しんでいる新暦が「 7月は大の月」と決まっているように旧暦も何月は大
 の月、小の月と決まっていると考えたのかも。
 だとするとこんな疑問を持たれても不思議はありません。

◇最近の旧暦の月の大小の並び
 この推測に沿って考えてみましょう。
 手始めには2009〜2012の旧暦の月の大小の並びを調べてみます。

 旧暦月  1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 月
 2009年:大 大 小 小 大 小 大 小 大 小 大 大 (閏 5 小)
 2010年:大 小 大 小 大 小 小 大 小 大 小 大
 2011年:大 小 大 大 小 大 小 小 大 小 大 小
 2012年:大 小 大 大 小 大 小 小 大 小 大 小 (閏 3 大)

 2009, 2012年には閏月が挿入されていますので、閏月だけは最後にくっつけ
 ています。
 さて、今回の話しの始まりは「 7月の大小」でしたから 7月を眺めてみます。
 年ごとの 7月の月の大小を抜き出してみると

  2009:大 2010:小 2011:小 2012:小

 となります。「大小小小」となり、今年の 7月が小の月であることは特に珍
 しいこととは思えません。また 7月以外の大小も見て頂ければ判るとおり、
 どの月も年毎にその大小の並びは異なります。

 新暦では小の月は「ニシムクサムライ」で表されるとおり、2,4,6,9,11月で
 1,3,5,7,8,10,12 月は大の月になることは始めから決まっているわけですが、
 旧暦にはこうした規則は存在しないのです。

◇旧暦の月の大小
 旧暦の月の大小は初めに月の大小が決まるのではなくて、月の初めの日付が
 まず決って、月の初めの日が決まった結果として月の大小が決まります。
 旧暦2010年の一部を例としてあげれば

  旧暦 7月 1日 (新暦 8/10)
  旧暦 8月 1日 (新暦 9/ 8)
  旧暦 9月 1日 (新暦10/ 8)
  旧暦10月 1日 (新暦11/ 6)

 とそれぞれの月の最初の日が決まります。旧暦 7月の期間は上の例では、新
 暦の 8/10〜9/7(旧暦 8月 1日の前日)となりますから、この日数を数える
 と29日となるので、この月は小の月となります。

 同様に 1日から翌月の 1日の前日までの日数を数えると旧暦月の 8月は30日
 で大の月、 9月は29日で小の月となります。

◇将来の旧暦の月の大小
 上で説明したとおり、旧暦の場合何月が大の月か小の月かを知るためには、
 まずその月とその翌月の 1日がいつになるかを知る必要があります。旧暦の
  1日はどうやって決めるかというと、「新月となる日」ですから、この作業
 は新月がいつになるかを計算して決める作業と云えます。

 今年も来年も小の月は「ニシムクサムライ」で事足りる新暦ならば、来年の
 カレンダーなど、小学生でも簡単に作ることが出来ますが、月の大小の並び
 すらも、まず新月となる日付を計算しなければならない旧暦にあっては、来
 年のカレンダーを作るなどと云うことは、一部の専門家でなければとても出
 来ることではありませんでした(現在なら、「Web こよみのページ」で必要
 な資料はみんなそろいますけれど・・・宣伝でした)。

 旧暦が正式な暦として使われていた時代、「暦」が毎年ベストセラーになる
 のも無理無いこと。だって、「暦」が無いことには、今月が29日までなのか
 30日なのかもわからなかったのですから。

   7月は31日、8月も31日、9月は30日

 なんて、何も見なくてもすらすらと答えられる新暦に慣れ親しんだ現代の私
 たちから見れば、毎年、月の大小の並びが変化してしまう旧暦は不思議な暦
 です。冒頭に掲げたメールを送ってくれた方も、こうした旧暦の不思議な点
 に気がついて疑問に思ったのでしょうか。
 だとしたら、こんな説明で少しはその「疑問」が解けたかな?


  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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