日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■初日の出・2012
今年もあと二日。
元旦には「初日の出」を見に出かけようと考えている方もいらっしゃること
でしょう。普段は「気がついたら昇っている」ことの多い日の出がこんなに
注目される日って、外にはないでしょうね。
◇初日の出 ・・・ どこが早いか
初日の出の話題が出る頃になると、同時に
「日本で一番早く初日の出が見られる場所は」
と云った話をあちこちで見かけるようになります。
「一番じゃなければいけないんですか? 二番じゃいけない理由は?」と何
処かで耳にしたフレーズが思い出されます。
別に見えればいいんじゃない?
と私なんかは思うのですが、見るからには誰かが「あ、出てきた!」といっ
たあとに自分だけ遅れて見るっていうのは何となく癪に障るという気持ちも
幾分かは理解できますので、どの辺が早いか調べてみることにしましょう。
日本で一番早く初日の出が見える場所は「南鳥島」です。その時刻は、
南鳥島 (北緯24°17′,東経153°59′)・・・ 5時27分
※与那国島(北緯24°28′,東経123°00′)・・・ 7時31分
おまけに書いた与那国島は何かというと、多分日本で一番遅く初日の出をむ
かえる場所です。南鳥島と比べると、初日の出は 2時間以上も遅いです。
両者の差は何かというとこれは位置。
南鳥島は日本の東の端、与那国島は西の端。東に行くほど初日の出の時刻は
早くなるようです(って、当たり前だ!)。
ちなみに、自分の住む場所での初日の出は何時何分か調べておこうと考える
かたには、Web の「こよみのページ」の日出没計算をご利用ください。
こよみのページの「日出没計算」
http://koyomi8.com/sub/sunrise.htm
ここで計算地点選択リストから近くの地名を選ぶか計算したい場所の経緯度
を入力して、次に2012/1の年月を設定して「計算実行」ボタンをクリックし
て 1/1の日の出の時刻をご確認ください。
◇初日の出の時刻は、位置の違いでどれくらい変わるのか
では位置が変化するとどれくらい初日の出の時刻が変わるのかを調べてみま
しょう。Web こよみのページの日出没計算で経緯度を変えて試してみると、
A地点 (北緯35°,東経135°)・・・7時 7分(基 準)
B地点 (北緯35°,東経140°)・・・6時47分( -20分)
C地点 (北緯30°,東経135°)・・・6時55分( -12分)
もったいつけずに結論から言えば、日本では「東に行くほど」&「南に行く
ほど」初日の出の瞬間は早まります。東と南へ向かうほどと言うことですか
ら、もっとも効率よくと云うのなら、
方位 118°(だいたい東南東)を目指せ!
と云うことになります。この 118°とは何かというと、初日の出の昇る方向。
ちなみに北を 0°として東回りに計った角度がここで云う「方位」です。
初日の出の方角は、本当は場所によって少々変化するのですが、北海道の納
沙布岬でも与那国島でもその方向でもその変化は122°〜115°の間ですから、
およそと言うことで言えば日本中、 118°と考えて問題ないでしょう。ちな
みに、この方角へ向かうとどれくらい初日の出の時刻が早まるのかというと、
20km進む毎に約 1分早まる
のでした。「え、20kmでたったの 1分?」なんて、落胆しないで頑張って。
ちなみにこの結果、離島等を除いた日本国内で一番早く初日の出が見える場
所は千葉県の犬吠埼と言うことになります。その時刻は 6時46分です。
◇高いところだと初日の出は早く見える
高いところに昇ると、遠くまで見通せるという理由で同じ場所なら高いとこ
ろの方が初日の出は早く見えます。背の高い人はちょっと有利。
どれくらいは早く見えるようになるのかというと、これは高さの平方根に比
例します。目安としては、
100mで 2分 , 500mで 4分 , 1000mで 6分 , 3000mで11分
と言ったところ。
先程離島を除けば「犬吠埼が日本で一番早い」と書きましたが、この高さを
考慮すると犬吠埼より富士山頂の方が早く初日が昇ります。その時刻は 6時
42分です。
なお、前述したこよみのページの日出没計算はこの高さを考慮した計算も出
来るので、興味のある方は「眼高」という欄に計算したい場所の高さを入れ
て試してみてください。
◇初日の出の時刻は毎年違う?
正確に計算すればもちろん毎年違います。が、「初日の出を見に行こう」と
いうレベルの話に「秒単位」までを問題にはしないとすれば、初日の出は毎
年同じと云えます。
毎年この時期になると「初日の出の時刻を教えて下さい」というような質問
が寄せられるのですが、一度知ったら、来年も再来年も使えます。毎年尋ね
ないでくださいね(←この手の質問は新聞社や雑誌社からのものが多い)。
◇ついでに・・・江戸の昔の初日の出事情
現在は脚光を浴びる初日の出ですが、昔からそうだったのかというと、さに
あらず。江戸時代の正月の風俗を調べてみても「初日の出」の話が見つかり
ません。初日の出を拝むと云った風習は無かったようです(少なくとも全国
的に広がっているといったことは無かった)。
江戸時代の人々の多くは、明け六ッと呼ばれる夜明け前に始まっていて、朝
日を拝むなんて云うことは当たり前。元旦の日だけ特別になんて思わなかっ
たようです。
それに、移動手段が基本的には自分の足だけしかない時代でしたから、初日
の出であっても、たぶんそれを眺める場所は普段生活している家の近所にな
らざるをえません。こうなると、「初日の出」といっても見慣れた普段の朝
の光景であって、なにか特別にありがたいものとは感じなかったように思い
ます。
「日本人なら、初日の出くらい見なくちゃ」
なんて考えるのは、元旦くらいにしか日の出を目にしないようになった現代
人ならではの風習と云うことが出来るのかもしれませんね?
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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