日刊☆こよみのページ スクラップブック
(PV , since 2008/7/8)
■今さらですが、金環日食の話
「はやりもの」に手を出しちゃいけない・・・
そうは思いながらも、そんなにあることじゃないので、つい手を出してしま
いました。
今回の日食は、ほぼ日本全国で欠け始めから欠け終わりまでの全期間が見え
る日食で、なおかつ
九州南部〜四国南部〜近畿南部〜東海地方〜関東〜東北南部
の広い範囲で金環食となる日食です。これだけ条件のよい日食にはなかなか
お目にかかれません(皆既日食ツアーで海外に出かけるなんてことの無い方
の場合)から、はやりものにのっかっても罰は当たらないでしょう。
◇おおざっぱな日食の経過
詳しい各地予報を書こうとするとそれなりに労力がかかりますし、この時期
にそれを書いたところで、二番煎じどころか
1983番煎じ
くらいになっちゃうだけでしょうから、詳しい情報はそうした他に譲ること
にいたします。どんなところがあるのという方は、国立天文台の今回の日食
情報のページなどをどうぞ。
⇒ http://naojcamp.mtk.nao.ac.jp/phenomena/20120521/
詳しいところは譲り(手を抜いたとは言わない)、ここではおおざっぱな日
食の経過を述べると、
06:05〜6:35頃(6:19) 日食の始まり(欠け始め)
07:10〜7:54頃(7:34) 食の最大
08:24〜9:26頃(9:03) 日食の終わり(欠け終わり)
上記の計算は沖縄県の与那国島〜北海道の根室までの計算の結果です。時刻
に幅がありますが、基本的には西側の地域ほど早く、東に行くほど遅くなる
と考えて、ご自分の住む場所での時刻は検討をつけて下さい。ちなみに()内
の時刻は、東京での時刻です。
前述した金環食となる地域では、食の最大の時刻をはさんだ前後1〜2分の計
2〜4分くらいの間、金環食となります。
沖縄の与那国島辺りですと日が出てすぐに日食が始まることになりますが、
他の地域では日の出からしばらく時間がありますので、太陽がよく見える場
所を探しても十分現象に間に合いそうです。
◇新月が見える貴重な瞬間
日刊☆こよみのページでは数限りなく取り上げた日本の太陰太陽暦(いわゆ
る旧暦)は新月を含む日を暦月の最初に据える暦です。
ところがこの新月は普段は全く見ることの出来ないお月様。この見えない新
月を見ることが出来る機会は、今回のような日食の場合のみ。
日食が起こったと言うことは、その日は新月であったということですから、
日本で使われていた太陰太陽暦ではこの日の日付は必ず「一日」で無ければ
ならなかったわけです。
日食が起こったのに暦の日付は二日だった
なんてことになったらこの暦は間違っているとみんなに知れ渡ってしまった
わけです。暦を作るものとしては、日食の日ははらはらどきどきの一日だっ
たことでしょう(実感したことがあるかわうそでした・・・)。
一方で、この新月が見える、日食という現象は将来の暦を作る上での貴重な
資料ともなるものでもありました。
◇様々な「××年ぶりの金環食」の謎
TVなどでは「○○で金環食が見られるのは××年ぶり」という報道が盛んに
なされています。
××年ぶり
と伏せ字にしたのは、その前の○○に何を入れるかによって××も変わって
しまうからです。
今回の日食は「金環日食」と呼ばれますが、日食が見られる地域であっても
金環食帯と呼ばれる帯状の地域以外では、ただの部分日食です(とはいけ、
日本の大部分では 8割以上欠ける、深い部分日食がです)。
先に紹介した国立天文台のサイトには、日本地図の上に南北にほぼ 300kmの
幅をもった金環食帯も描かれています。ここから外れた、例えば仙台市では
金環食にはなりません。仙台では見えなくても、
日本国内で金環食が見られるのは25年ぶり
というのは間違いとは云えません。ちなみに25年前、1987年 9月の金環食は
沖縄などのごく一部しか金環食帯に入りませんでしたから、そこから外れた
東京で、
東京で金環食が見られるのは 173年ぶり
といってもこれは間違いではありません(ただし、東京を小笠原や南鳥島ま
で含んだ領域と考えると違ってきますけれど)。
ちなみに 173年前というと1839年、天保十年。幕末に長州の奇兵隊を創設す
るなどした高杉晋作が生まれた年。確かに東京(当時は「江戸」ですか)か
ら東の方向に金環食帯が通過しております。
他にも、「大阪で」とか「首都圏の大部分で」とすると××年ぶりという表
現はいろいろと出来ます。ニュースとしては「××」が大きいほどインパク
トが大きいのでしょうが、中には
そんな無理矢理の表現をしなくとも
というものもありますね。
◇ケチをつけながらも、やっぱり見たい
はやりものにはのりたくないし、そのニュースの文言にはケチもつけました
けれど、でもやはり見たいですね。
こちらもいろいろな場所で呼びかけられていますが、強烈な太陽を見る場合
には、十分に減光(光を弱める)しないと、視力障害を発生する危険性があ
ります。特に小さなお子さんなどと眺める際には、十分に注意して下さいね。
あとは、当日が晴れることを願って、てるてる坊主でも作りましょうね。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
日刊☆こよみのページ スクラップブック