日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■冬至前に日が伸びる?
今年の冬至は 12/22。
あと10日少々で一年で一番昼の短い日がやって来ます。しかし、「昼が一番
短い」はずの冬至を前に、「日が伸びたんじゃない?」という声もちらほら
聞かれます。その理由は、日没の時刻がほんの少しですが、遅くなり始めて
いるからです。
今日、12/10 の東京での日没の時刻は
12/10 16時 28分 1秒 ( 9時 49分 2秒)
日出没は、計算上は大気の屈折による大気差や、これを観測するものの目の
高さである眼高、太陽の見かけの半径の変化なども影響します。大気差など
は気温や気圧の変化などで変わることから、現実の日出、日没を秒単位で求
めるというのは困難です。通常は細かく計算しても、表示は分までくらいに
留めます(それ以上の精度はないでしょうから)が、ここではちょっとした
変化の比較を行うため、あえて秒まで計算しています。
※計算の条件は、Web こよみのページの日出没時刻計算と同じとしました。
⇒ (参照) http://koyomi8.com/sub/rise_doc.htm
午後 4時半よりも前に日が沈んでしまうのですから、大分日が短い日と云え
ると思います。
ちなみに後ろの()内の数値は日出から日没までの時間です。
同じようにして計算した次の三日間の日没の時刻をご覧下さい。
12/05 16時 27分 45秒 ( 9時 52分 51秒)
12/06 16時 27分 44秒 ( 9時 51分 59秒)
12/07 16時 27分 45秒 ( 9時 51分 11秒)
どうでしょう、今日よりも冬至から離れているはずのこの 3日の方が日没の
時刻だけを見ると、早いではありませんか。実はこの 3日の真ん中の12/6が
東京で、今年一番日没の時刻の早い日なのです。日没の時刻が一番早いのは
冬至の日ではなくて、その半月も前の日でした。
◇日が短いってどういうこと?
「なんか騙されているみたい」と思われるかもしれませんが、謎解きのヒン
トは日出から日没までの時間を示した()の中身です。12/6と12/10 のデー
タを並べてもう一度見てみましょう(ついでに冬至の日のデータも)。
12/06 16時 27分 44秒 ( 9時 51分 59秒)・・・日没時刻が最も早い日
12/10 16時 28分 1秒 ( 9時 49分 2秒)・・・今日
12/22 16時 31分 57秒 ( 9時 45分 13秒)・・・冬至の日
日没は確かに12/6の方が早いのですが、日出から日没までの時間を見ると、
12/10 の方が短い。冬至の日は更に短い。
「日が短い」というのはどういうことかと考えれば、それは日が昇ってから
沈むまでの長さ(もっと素朴に、明るい時間のながさかな?)が短いという
ことでしょうから、やはり一年で一番日が短いのは冬至の日なのです。
ですが、我々の日常生活は、太陽の動き以上に時計の針の動きの影響を受け
ています。仕事は17時までといった具合に時計の針の位置で決まっている方
の方が、仕事は日没までという方より、きっと多いことでしょう。
そうした時計の針の動きを基準として見ると、
仕事の終わる時刻の30以上も前に日が沈む・・・日が短いな・・・
と感じるのではないでしょうか。
でも、それならば日の出の方だって同じように感じるのではないかなと思い
ますが、こちらは冬至が近いとはいえ、日出の時刻は 6時台。この時間だと
仕事の始まりの時刻といった、印象に残る時刻からは大分離れた時刻なので
記憶に残りにくいものなのではないでしょうか。
おそらくそうした理由から、実際の「日が短い」という現象とは一致しない、
心理的な「日が短い日」が生まれてしまうのだと考えます。
ちなみに日没時刻が一番早い日は、緯度が異なると違ってきます。札幌と那
覇について調べてみると、その日は
札幌 12/10 15時 59分 50秒 ( 9時 5分 46秒)
那覇 12/01 17時 37分 14秒 ( 10時 38分 16秒)
です。日出から日没までの時間の長さについては、札幌も那覇も東京と同じ
12/22 の冬至の日です。
◇なぜこうなるのか?
これは我々が時刻を測っている時計の針と、自然の時計の針の役割を果たし
てくれる太陽の進み方に違いがあるためです。
ちょっと専門的な言葉を使えば、平均太陽時と真(視)太陽時に差があり、
その差が季節によって変化するためです。
この差を「均時差」と呼びます。
均時差について説明するとこれが結構大変なのでこの辺は省略させて頂きま
す。詳しく知りたい方はWeb こよみのページの
暦と天文の雑学
⇒ 冬至は一年で一番日の出の遅い日か?・・・均時差の話
(http://koyomi8.com/reki_doc/doc_0508.htm)
に書いておりますのでこちらをお読み下さい(文章だけではとても説明出来
ないので、図やグラフを入れて説明しています)。
冬至前ではありますが、既に日没の時刻は遅れ始めた東京で、さて私は、日
が伸びたと感じるのか否か?
自分自身の「感覚」をよくチェックしてみることにします。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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