日刊☆こよみのページ スクラップブック
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■織り姫星と彦星の間の距離は?
昨日は、旧暦の七月七日ということで、七夕の話を書いてみましたが、本日
はその余勢を駆って(?)、織り姫と彦星を隔てる距離について書いてみま
しょう。
ただし、織り姫と彦星の距離といっても
織り姫(ヴェガ:こと座のα星) ・・・地球から25.0光年
彦星 (アルタイル:わし座のα星)・・・地球から16.7光年
とかいう話ではなく、地球上にその位置を置き換えて距離を測ったらという
話をしてみます。
◇星の真下の位置
昔々GPS 衛星もグロナス衛星もなかった頃(ついでにその全世代のNNSS衛星
やオメガやロランCなんて云う電波航法も使えなかった頃)、島影も見えな
いような、大海原のまっただ中の位置は、空に昇る太陽や星の水平線からの
高度を測って計算によって割り出す他なかったのでした。
このように自分の位置を測るために天体の位置を測ること、あるいは、それ
によって位置を割り出す方法を「天測(てんそく)」とか「天測法」と云い
ます。この天測によって船や飛行機を運航させる航法を「天文航法」と云い
ます。
天測の原理は案外簡単です。
地球の中心と星を結んだ直線を考えると、この直線は、何処か1点で地球の
表面と交わります(地球の裏側も考えれば2点ですが、とりあえず裏側は考
えない)。
この交わった点で星を見ると、その星は真上に見えるはずです(直線の反対
側、地球の中心が真下ですから)。逆に云えば、ある瞬間にある星が真上に
見える地点は地球上に1カ所しかないことになります。
天測による地球上の位置の割り出しは、ある瞬間に星が真上に見える地点を
求めることがその第一歩です。
もちろんこれだけでは、星が真上に見える1点しか求まらないので実用にな
りませんから、さらに一工夫して、2つ以上の天体の位置を測って自分の位
置を求めるのですが、これ以上の天測の話は長くなりますので、今回は省略
いたします(いつか、また話の種に使おうという魂胆もあり?)。
◇織り姫星と彦星の地球上の距離は?
話を織り姫星と彦星の話に戻して、ある瞬間に織り姫星が真上に見える地球
上の地点と彦星が真上に見える地点の距離を考えてみます。
織り姫星であるベガと、彦星、アルタイルの位置は、星の位置を表す天球の
赤道座標で
ベガ 赤経 18h36m56.3s (= 279°14′05″), 赤緯 +38°47′01″
アルタイル 赤経 19h50m47.0s (= 297°41′45″), 赤緯 +08°52′06″
※2000.0分点の位置(今回はこのまま使います)
となります。
星が真上に見える地球上の経緯度は、緯度に関しては星の赤緯をそのまま緯
度と読み替えることが出来ます。
経度については、地球は自転するので時々刻々と変化してしまうのですが、
今回の計算では、経度の差さえわかればよいので、こちらもそのまま経度に
置き換えて考えても問題ありません。
つまり、織り姫星と彦星の地球上の距離は、
経度 279°14′05″, 緯度 +38°47′01″(米国ウェストバージニア州)
経度 297°41′45″, 緯度 +08°52′06″(ベネズエラ)
の2地点の距離と考えられます。()は、この経緯度を地図に落とした場所
です(間には天の川ならぬ、カリブ海があります。一応地続きですが)。
この2点の球面上の距離 xは、球面三角形を解くことで
x = 34°11′42″
と求めることが出来ます。地球を半径6378kmの球たど考えるとこの角度は、
3806kmに相当します。
星と星の「何光年」なんて云う距離に比べたら、地球上に置き換えた織り姫
星と彦星の距離はたいしたことはないですが、人間のレベルで考えると、こ
の3806kmはまだまだ遠い。
一晩の間に、織り姫に会いに行くためには、彦星は牛車じゃなくて自家用ジ
ェット機が必要なようです。
遠距離恋愛には苦労がつきものなんですね・・・
以上、本日は旧暦の七夕の翌日ということで思いついた、ちょっとおかしな
暦のこぼれ話でした。
(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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