こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■海といえば山?
 今日は、祝日。
 言わずと知れた「山の日」です。
 (案外、言わないとわからないかも・・・)

 祝日としての山の日は今年、2016年が最初の年。
 デビューの年となりました。
 その「山の日」とは

  「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」

 という意味を持った祝日です。
 フーム、この言葉どこかで・・・

  「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し豊かな心をはぐくむ」
  「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」

 前者は「みどりの日」、後者は「海の日」の祝日の意味。
 似ている。みどりの日の言葉の「自然」を「山」に置き換えたら、ほとんど
 そのままじゃない?

 考えてみると、「みどりの日」も「海の日」も、そして「山の日」も特定の
 日付に結び付いた記念日が祝日になったというものでない、なんとなく曖昧
 模糊とした祝日。この日じゃないといけないといった確たる意味が無いため
 に、祝日の意味もこんな漠然とした書き方になってしまうのでしょうか。
 そんなことを考えるのは意地悪な性格の私だからでしょうかね?

◇夏の、お盆ウィーク?
 日付に特別な意味のなさそうな祝日として、失礼なことに「みどりの日」と
 「海の日」の名前を出してしまいましたが、それでも「みどりの日」は昭和
 天皇の誕生日を祝った祝日として生まれたという経緯がありますし、「海の
 日」だって

  明治9年に明治天皇が東北地方巡幸の帰途、灯台視察船「明治丸」に乗っ
  て、横浜港に帰還した日

 という海の記念日を祝日化したしたというものなので、日付にはなにがしか
 の意味がありました(「海の日」は、その後にいわゆる、ハッピーマンデー
 法のために、移動祝日となってしまいましたが)。しかし、山の日の日付は
 いったいどこから? 日付については、根拠といえるものがありません。

 祝日のない8月に祝日を・・・と考えたんだろうなとは想像がつきますが、
 その日付について考えてみると不思議。連休を増やしてその経済効果を狙う
 というのであれば、「山の日」の先輩の「海の日」のように移動祝日にすれ
 ばよいのでは???

 しかし山の日は移動祝日にはならず、8/11という日付に固定されています。
 考えられるのは、山の日の直後に訪れる非公式な連休、お盆の存在がありま
 す。

 お盆は本来は7/13〜15(ないしは16)という日付に行われる盂蘭盆の行事で
 すが、現在は「月遅れの盆」と称する新暦の8/13〜15(ないしは16)の行事
 として定着した感があります。4〜5月のゴールデンウィークや 9月にたまに
 姿を表すシルバーウィークのように、この期間も比較的大きな連休の期間と
 なっています。ゴールデンウィークやシルバーウィークとの違いは、月遅れ
 の盆はあくまでも慣習的に行われているだけで、祝日の日付が集中して生ま
 れたものではないということです。

 いっそのこと、「お盆の日」なんて祝日を作ってしまえばよさそうですが、
 古来からの祖先崇拝と結び付いて、特定の宗教との結びつきは薄らいだとは
 いえ、やはり「盂蘭盆」は仏教に端を発した行事であるのはだれの目から見
 ても明らかですから、はやりそうはいかなかったようです。

 仕方ないので「お盆」のほうは相変わらず、慣習的に休んでもらって、その
 前後に祝日を追加して、連休を大型化しようと考えたんでしょうね。

◇夏、海といえば山・・・かな?
 じゃ、なんで山の日なのかなと考えると、夏だし、海の日あるし、海といえ
 ば、やっぱり山。「海の日」があるなら「山の日」があってもいいかなとい
 うことじゃないかなと思います。

 そして日付ですが、お盆とつなげて大型連休ということでいえば、8/12が最
 適と思われます。事実、「山の日」の提案がなされた当初は8/12でした。

 しかし、8/12という日付と「山の日」が結び付くと、ちょっとまずいことが
 あることが判明。それは、この日が1985年に日航ジャンボ機 123便が群馬県
 の高天原山の御巣鷹の尾根に墜落して、 520名の死者を出した日。現在でも
 この日には、慰霊登山などが行われており、山の日として祝うのはちょっと
 まずいのではと考えられたようです。
 そして、8/11が山の日に。

 本当の実力者が裏に隠れて、都合のよい(そして本当は力がない)ものを前
 面に押し立て、これを傀儡とすることがありますが、なんだか「山の日」、
 月遅れの盆という真の実力者が表立てないために作り出された傀儡祝日みた
 いですね。

 夏といえば海、そして山。海といえば山だよね〜
 なんて、本当に軽い感じで決められちゃった感じ満載の山の日ですが、いつ
 かは本当に

  山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する日

 になることを、最初の「山の日」を迎えた本日は祈りながら、こよみのこぼ
 れ話を閉じることにします。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)
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