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旧暦の日付が違う?(2001年の騒動)
    
今年の旧暦の日付が本によって二通りあり、
どちらが正かもめている

 全国版のTV番組で珍しく暦の話題が取り上げられていた。たしか2月中頃の放送だったように記憶している。
 「本によって・・」の本は、年末になると書店の店頭に並ぶ「神宮×暦」と言った類の本のこと。日の吉凶なども事細かに書かれている、あの本のこと。いくつか出版されているらしいが、その中でも比較的大手の2社の記載にづれがあるらしい。特に、今回は5月の連休の時期の日付が違っていることから、大きな問題になっているらしい。

 さて、ここで「旧暦の日付が違っていたらなにが困るの?」と思う方々もいることだろう(私も、その一人)。だが、一部の人たちには「大問題」なのである。それは、「大安・仏滅・・・」といったもの(六曜といいます)は、旧暦の月日で決まるからなのだ。
 「大安の日は結婚式が多い」と言うことは、半ば常識化した現象である。当然結婚式場関係者は敏感に反応することだろう。しかも5月の連休の最後、5月6日の日曜日が一方の本では大安で、もう一方では仏滅となっていることからさあ大変。
 「日曜日の大安」なんて、結婚式場にとっては「黄金の日曜日」なのだろうから。

 さて、先日どうしたことか、どこかの出版社からこの件についての電話取材があった。その取材の際に、一方が「中国の万年暦という本から旧暦の日付を得ている」という話を聴いた。これを聴いて、なぜ日付が違うなどと言うことになってしまったか、その疑問が一気に解けた。簡単な話である。その原因は「時差」。

ここで、次のことを確認しておく。
1.日付は、国(地域)の標準時0時に変わる。
夜中の0時です(これを「正子」といいます)。
 
2.旧暦の月は、朔(新月)を含む日に始まる。
新月となる日は、旧暦の「朔日(ついたち)」になります(詳しくは、旧暦の月の決め方を読んで下さい)。
 
3.朔(新月)とは、太陽の視黄経と月の視黄経が同じになる瞬間である。
「視黄経」というのは、天文学で用いる座標系の一つ(黄道座標)での経度の値。話が長くなるので、説明は省きますが、「ふーん、そういうものか」と思っておいて下さい。
 
4.朔(新月)となる瞬間は地球上の位置に関係無く、同時に起こる。
「視黄経」は、今回の話に関しては「地心視黄経」というのが正しい。地球の中心から見た角度。よって、日本も中国もヨーロッパもアメリカも南極も北極も関係ない。

 まあ、その筋の方々にとっては「当たりまえ」のことですが、あえて書いてみました。
 ここで問題になるのは、1の日付の変わる瞬間は各国まちまちであると言うことと、4の朔の瞬間は地球上どこでも同じ瞬間だと言うことです。
 さて、1と4の関係を今回の例にあわせて示したものが次の図。
2001年の旧暦4月1日と、新暦の関係(日本と中国)
暦日相違
 図の中央付近に「朔」を迎える時刻を示す青線を入れてみました。上段が日本標準時、下段が中国の標準時(北京標準時?)。図の通り、日本と中国の時差のため、日付が変わるタイミングがずれています。このため
  日本では 新暦4/24 = 旧暦4/1
  中国では 新暦4/23 = 旧暦4/1
となります。

 この1日の差が、今回の問題の原因です。ちなみに、今回考えた例では日本と中国とでは1時間の時差がある(北京)と考えているが、1時間の時差があると朔の正確な日時はどうなるかと言うと、
日本時では、
朔は、4月24日 0時26分
中国時では、
朔は、4月23日23時26分

前述の中国の万年暦は当然日本時で計算したものでは無いので、下段の値を採用して、旧暦の4月1日は新暦の4月23日としているはず。それをそのまま掲載してしまったとすれば、間違って当然です。月のはじめの日付が違っているのだから、最低でも1月間はずーーと、六曜がずれる。大変だね。
 余談になるが、話に出てきた万年暦をかつて仕事の参考資料として使っていたことがある。そのころチェックしてみたところ、結構あちこち違いがあったと記憶している。日付のずれは今年に限ったことでは無いはずだが、今まではなぜ問題にならなかったのかな?
 取材の中で「六曜は元々中国から伝わったものだから、中国のものの方が正しいのでは?」と言われたのだが、これはナンセンス。新暦は世界中のかなりの部分で共通に使われているが、日本の日曜の朝の7時にアメリカに電話して、アメリカが土曜日(アメリカではまだ日付が変わっていない)だと聴いて、「それは間違いだ!」と言えば、頭の中身を疑われる。暦日の数え方は共通の新暦であっても、日付の起点は地域(国)毎に時差があるのだから。時差を無視するのは出来ない相談だ。
 それに、「中国から伝わったから、中国の方が・・・」なら、日本においては「旧暦の4月は新暦の4月24日の午前1時から始まります」と言わなければならないことになる。そんな馬鹿な!。

 さてと、これで「なぜ間違いが起こったか」の謎解きは出来たのだが、問題になっている出版社にしてみればなかなか簡単には引き下がれないのだろう。何せ片や200万部、片や30万部も販売しているとか、もし訂正なんてことになると・・・。そこから先は、こよみのページとは関係ないことか。

 ちなみに、こよみのページの新暦と旧暦のコーナーの計算結果は、旧暦4月1日→新暦4月24日。5月6日の日曜日は残念ながら「仏滅」となる。
参 考.
問題.旧暦はどこが決めるか
回答.好きにして下さい(?)

「旧暦はどこが決めるのですか?、国立天文台ですか?」
という質問が時々ある。だが現在の日本には「旧暦」なんてものを所管している公的機関は存在しません(旧暦の旧暦たる所以は、法的には「廃止された暦」だから、現在の暦に対して「旧」と言っているだけ。正式な名称でも何でもない)。
 昔なら、「官暦」(御上の決めた正式な暦)があったので、今回の様な問題があっても、御上の権威のもとでこっちが正しいと言えたのだがね(御上の許可を得ない暦を作るなんてことは重罪だったのだ)。
 と言うことで、そういう話に「公的機関のお墨付き」を得ようとしても無理。残念。はっきり言ってしまえば、各種の「旧暦」は勝手に作られたもの。どれを信じるかは、あなたの好きにして下さい。

大手2社(今回の話題の発端となった出版元)
 既にニュース報道されていることですから、隠す必要はありませんね。今回問題となった2社とは、実は同じ「高島易断」を名乗るものでした。
  1.高島易断・神宮館
  2.高島易断・神聖館
 どう違うのかは、占いの素人である私にはわかりません。それそれのHPもあるようですので、興味のある方は直接当たってください(検索エンジンで見つかります)。

余 談
日の吉凶・六曜について
 六曜(大安・仏滅・・・)は、旧暦の「月」と「日」の関係で単純に決まっています。判ってしまえば旧暦時代の「曜日」みたいなもの。ありがたみなんて無いと思うのだが(この辺の話は六曜のはなしを読んでね)。
万年暦の紙の色
 本文中にも書いたが、中国の万年暦を参考資料として使ったことがある。この本、めでたい色なのかどうか知らないが「赤い紙」に印刷されている。このため何かのチェックに使うときは書き込んでも見づらい(赤ペンなんかで書いたらそれこそ見えない)し、かといってコピーしてその上に書こうとしてもコピーもうまく出来ない。使いにくかったことしか覚えていない。
占いはしません!
 他でも書いているのだが、私は六曜占いなんてものには興味がない。結婚によい日は・・・なんて相談を持ちかけられても困る!(こんな時は、今回話題の「神宮×暦」にはこんなことが書いてありますよと答えているのですが)。
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