海外で見える「今日の月の形は?」
海外で見える「今日の月の形は?」
 こよみのページには各所に月齢や、月の出、月食情報などが掲載されている。しかしながら、年間何百万人もが海外を旅するこの時代だというのに「よその国での見える月の形」の情報はどこにもない(2001/05/27 現在での話。05/30に時差を考慮した修正版「年間の朔望表」をアップしました)。なぜだろうか?

  1.作者がバリバリの国粋主義者で、他国のことなど眼中に無い。
  2.作者は、カワウソならぬナマケモノで、作るのが面倒だった。
  3.こよみのページを利用する人がいないから、誰も困らない。
  4.海外でも月の形は変わらないから、誰も困らない。

さて、どれでしょう?
 まあ、1は除外してもらうとして、正解は4(2,3に関しては何ともいえない)。

 日の出入の時刻や、月の出入の時刻は地球上の場所によって大きく変わる。だから経緯度を計算に含める必要がある。ところが「月の形」または「月齢」といったものは、実は地球上どこへ行っても変わらないものなのでした。

 ということで、たとえば日本において
  満月 : ○月×日△時
であるなら、たとえば地球の裏側の国であっても

  満月 : ○月×日△時 + 日本との時差
となる。違いといえば最後に加えた「時差」の箇所だけ。

 下に、月が地球の周りを回っている状況を模式的に図化したものを掲げる。図の中心付近にあるのが地球。
 外側に並んだ月の絵は、月が地球の周りを回っているとき、図の右側(の、うーんと遠い所)にある太陽から照らし出された姿を描いたもの。視点は地球の北側のうーんと遠い宇宙空間。現在だと神様と、惑星間探査機くらいしか御覧になれない風景。

 内側に描いた月の形は、地球から各々に位置にある月を眺めた場合に見えるもの。こちらは新月→三日月→上弦→満月・・・となる、おなじみの月の満ち欠け。

 さらに地球の上にA,Bと書いたものは、Aが地球上の日没の位置、Bがその反対側の日の出の位置を表している。

 この図では地球と月の距離は大したことは無いように見えるが、これは「紙面の都合」というやつで、ホントはもっと離れている。どのくらい離れているかというと、真ん中の地球の直径を基準とすれば、それの約30倍離れた位置を月が回っている。

 仮にA地点で満月を眺めている人がいるとする。この瞬間にB地点で月を見ている人がいるとするとこの人が見ている月も満月。どちらも同じ月の姿である(A地点では月は東から昇るところ、B地点では西の空に沈むところという差はあるが)。

 同じことを上弦の月でも考えてみると、A地点では上弦の月が真上に見えている。B地点では上弦の月が真下に見えている・・・はずであるが、何せ地球が邪魔しているので実際には月を見ることが出来ない。それでもあと6~7時間も待てば上弦をちょっとだけ過ぎた月が昇るはずである。

月の見かけの姿
 このように、その瞬間に月が昇っているか否かは別とすると、地球上どの地点でも月の形は同じに見えることがお解り頂けただろうか?
 よく考えれば当たり前のことなのだが、意外にこの辺を誤解している人は多いようで、何件も問い合わせを受けた。この文を書いたので、これ以後は「暦と天文の雑学を読んでね」と答えることにしよう。

 なお、「月齢」に関しては地球中心で考えた月と太陽の位置関係が朔(新月)になった瞬間からの日数を表したものなので、これも「どこの国では・・・」という問題とは無関係。同じ瞬間なら世界中どこでも同じ値である。

補足 
「それでも、南半球での月の満ち欠けは北半球と逆に見えるけど?」
と言う疑問が残ると思います。こんな疑問を持った方は、月の見え方・北半球と南半球もお読みください。その辺の事情も解説しております。

余 談
ホントに形は、同じ?
 「世界中どこでも、同じ瞬間の月の形は同じ」と説明したが、地球の大きさがあるのでホントはちょっとだけ違う。どれくらい違うかというと、1日で変化する月の満ち欠けの量を1とすると、大体その1/6位は違って見える。
 肉眼でこの差がわかる人はまずいないと思うし望遠鏡で見ていたって普通は気づかないだろうから、まあ問題になるようなことはないでしょう。
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