恵方詣に、恵方巻・・・恵方ってどっち?
恵方詣に、恵方巻・・・恵方ってどっち?

 「今年の恵方は○○○の方角です。恵方詣には××神社へ」

 元旦に届くチラシにこんなことが書かれていることがあります。
 最近では、節分の頃にも「節分には○○○の方角を向いて恵方巻を食べましょう」というポスターを見かけることもあります。

  恵方詣? 恵方巻?、恵方? さてなんでしょう?

 現在はさすがに廃れたと思うのですが、昔は方角による吉凶判断をよく行ったようです。吉凶判断とはいいながら、どちらかといえば「凶」の方に注意が向いていて、凶の方向への旅や、引っ越し、嫁取りなどは避けようとしたようです(「方忌み(かたいみ)」)。またその方角へ向かう場合は凶事を避けるため、一旦別の方向に向かってから出直す、方違え(かたたがえ)などを真剣に行っていたようです(源氏物語なんかに頻繁に出てきます)。もちろん迷信に決まっていますので気にする必要はありませんが、昔の人が気にしていたので年中行事の中にはその影響を受けたものもあります。今回の話題もそうした影響を受けて出来た行事です。

歳徳神? さて、今回の話はこの「方角による吉凶判断」の「吉」の側のものです。
 年末年始に町の本屋さんの店頭を飾る「高○易断××館 運勢暦」などの最初のページを開くと、乙姫様のような女神様の絵が描かれています。この神様は吉神で、この神様のいらっしゃる方角はこの神様の力によって、他の悪い神様の影響を受けない方向とされ、明の方(あけのかた)あるいは恵方と呼ばれるようになりました。この目出度い神様は歳徳神と呼ばれます。

 この歳徳神様は移り気な性格なのでしょうか、年ごとにその居場所を変えます。このために冒頭に書いたように
 「今年の恵方は○○○
となるわけです。

 元々恵方は正月の神の来臨する方向であったのですが、九星術という占術の流行とともに「歳徳神」の所在する方向と考えられるようになったものなので順序が違うのですが、現時点で考える限りどちらでも同じことですので気にしないで話を進めることにします。

恵方と年数の関係
(年の十干で決まる)
年の十干方 角西暦年末尾
の数字
甲・己の年甲(寅卯の間)東北東4 または 9
乙・庚の年庚(申酉の間)西南西0 または 5
丙・辛の年丙(巳午の間)南南東1 または 6
丁・壬の年壬(亥子の間)北北西2 または 7
戊・癸の年丙(巳午の間)南南東3 または 8
 恵方は、恵方詣や恵方巻を食べる際に必要になる方角ですが、既に書いたように年毎に変わります。困った・・・いえ、ご心配なく。年の十干さえ判れば次の5パターン(重複をのぞくと4パターン)しかないのです(右表参照)。
 表だけでは今ひとつ解りにくいという方は、表の最後の「西暦年の末尾の数字」で、その暦年に該当する数をクリックしてみてください。下の図でその年の恵方の方角が示されます。
(ついでにここにも。西暦年末尾1桁を並べてみました。クリックして遊んで下さい → 0 , 1 , 2 , 3 , 4 , 5 , 6 , 7 , 8 , 9
恵方表示盤

  • 恵方詣(えほうもうで・えほうまいり)
     恵方詣は江戸の頃から盛んになったもので、初詣は自宅の場所から見て恵方にある寺社に詣でるというものです。これは初詣に限らず、その一年間は好んでその寺社に詣でたものと想像出来ます。
     江戸の頃は今に比べて娯楽も少なかったでしょうし「遊び歩く」ことには周囲の目が厳しかったでしょうが、寺や神社への参拝は「大手を振って行える」ものでしたから、信心深い方も、ただ遊びに出かけたい方も、今よりずっと数多くの回数の参拝をしていたと思われます。恵方は方角ですから別に遠い近いという区別をする必要はありません。とすれば、
     「今日はいい天気だし、明の方の○×の八幡様にお参りにゆくか。
      いや、毎度同じでもつまらないから、足を伸ばして、△◇の○△寺参りかな」
    何ていうこともあったのかもしれませんね。

  • 恵方巻(えほうまき)
     関西で流行りだした行事です。
     私の記憶では2003年あたりからは東京のコンビニエンスストアにも「節分には恵方巻」のようなポスターが貼られるようになっていました。1997〜1999年も東京で暮らしていましたがその頃にはこういったものを見かけなかった(私の気付いた範囲ではということになりますが)ので、箱根の関を恵方巻が越えたのは2003年か、その少し前くらいだったように思います。
     恵方巻きは大阪の商人の街として知られる船場あたりで明治の初め頃から始まったという説が有力です。
     全国的に拡がる切っ掛けとなったのは海苔業者が海苔の消費拡大を狙ってキャンペーンだと考えられます(何たって、節分の日は「のり巻きの日」は、海苔業者団体が制定した記念日です。制定年は1987年)。
    。ウィキペディアには次の様に説明されています。

    節分の夜にその年の恵方(歳徳神の在する方位)に向かって、太巻きをまるかぶりするのが習わしとされる。食べている間は、無言でなければならない。
    七福神にちなんで、かんぴょう、キュウリ、シイタケ、伊達巻、うなぎ、でんぶなど七種類の具を入れて、福を食べるという意味合いもあるらしい。「福を巻き込む」という説明もある。
    「恵方巻」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(http://ja.wikipedia.org/)。2005年2月2日01時(日本時間)現在での最新版より一部 抜粋


     「まるかぶり」については、包丁で切ることで中に巻き込んだ福がこぼれないためといわれます。他に、赤い色のデンブを赤鬼、青い色のキュウリを青鬼と見立てて、これを平らげるともいいます。その始まりがハッキリ解っていない行事ですので、行事内容の謂われについても諸説ありますのでご了承ください。
     ちなみに現在の春の節分は昔は年越しの日の意味合いがあったのですが、上の七福神や、包丁を使わない(金気を避けること、切るという言葉を忌む)等の恵方巻行事の内容には、正月行事に通じるものがある気がします。もちろん節分に行われる行事ですから、豆まき行事等とも関係がありそうですので、興味のある方は下記の参考記事も合わせてお読みください。
余 談
いつものことながら
 泥縄です。
 「今年の恵方はどっちですか?」という質問が幾つも舞い込んできたので、ここに答えるのが面倒になってこれを書着始めました。それも節分前夜(2005/02/02)に。
 まあこれで来年からは、このての質問が減って暮れるのならそれでいいのですがね。そう期待しながら恵方巻にかぶりつくことにします。
※記事更新履歴
初出 2005/2/2
追加 2021/07/21 画像の追加
追加 2023/01/20 文体等の一部修正
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