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日刊☆こよみのページ · 読み物 (2026/10/04~)

2026年10月5日掲載 / 第7310号

この記事は掲載当時の本文です。「本日」「今年」などは、2026年10月5日を基準にお読みください。

暖房、使い始めました!

ここ数日でめっきり寒くなりました。寒がりな私は既に半月も前から

寒くなった!

といっており、周囲から冷眼で眺められておりましたが、ここに来てようやく世間も私の感覚に追いついてきたようです。やっと時代がかわうそに追いついてきた・・・なんてね?

十月の亥の日

昨日、2026/10/4の日の干支は辛亥(かのとのい)でした。十月最初の「亥の日」でした(新暦の十月ですが)。

近頃寒くなってきたことと、十月最初の亥の日ということで、これは暖房の使い始めの話をするしかない! と考えました。なぜかというと、昔は亥の月亥の日は暖房器具の使い始めの日とされていたからです。

亥の日については昨日が六十干支が辛亥でしたから、十二支を表す言葉は「亥」、つまり亥の日です。

「亥の日は解ったけれど、亥の月の方は?」

と思われる方もいらっしゃると思いますが、その答えは「昔から十月は亥の月とされていたから」です。説明完了(?)。

「昔からそう決まっていた」と説明されて、「おおなるほど、そういうものなのだな」と納得してくださる方ばかりなら楽なのですが、世の中にはそれでは説明になっていないじゃないかと考える方もいらっしゃる(私です)と思いますので、ここでちょっとだけその辺の話にふれることにします。

「亥の月」の「亥」はもちろん子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥と並ぶ十二支の亥のことです。この十二支は暦の上の年・月・日それぞれに割り振られています。年に割り振られた十二支については

私は亥年(いのししどし)の生まれです

のように現在でもよく使われています。これと同様に月・日についても十二支が割り振られています。日については既に例を紹介したとおりですが、月にはどう割り振られているかというと

寅(正月)、卯(二月)、辰(三月)、巳(四月)、午(五月)、未(六月)、申(七月)、酉(八月)、戌(九月)、亥(十月)、子(十一月)、丑(十二月)

という具合です。1年は12ヶ月で、十二支も12ですからぴったりで、年が変わっても月と十二支の関係は変わりません。それで十月はずっと「亥の月」だったので亥月といえば十月を指していると解るようになっています。

さて、なぜ十月が亥の月かという話が長引いてしまいましたが、ここからが本日の本題。十月亥の日は暖房を使い始める日という話です。

寒くなれば「火」が欲しいというように、暖房器具といえば当然「火」がつきものです。現代のように電気で動作するエアコンなどが無い時代には、暖房といえばもう「火」だったのです。

火は食べ物の煮炊きにも使えれば照明にもなり、寒い冬には暖房として使えます。大変ありがたいものです。ただその便利さの反面に危険もあります。火事です。火事は「地震、雷、火事、親父」と怖ろしいものの一つとして数えられています。

火は利益ももたらすけれど、その勢いが制御出来ないほど強くなっては大きな災厄にもなるのです。そうした災厄に見舞われないようにするために、この火の勢いを制御するものが必要です。それが「亥」なのでした。

十二支における「亥」は古代中国の哲学思想であった五行説では「水気」、陰陽説では「陰気」にあたります。水は火に打ち克つ力であり、陰気は猛々しさのない穏やかな力です。ですからこの両方の性質を兼ね備えた「亥」には火の力を穏やかに押さえ、制御する働きがあると考えられたのです。

こうした古代思想から、亥の日や猪(=亥)には火事除け、火塞ぎの霊力があると考えられるようになったのです。

旧暦においては冬の期間は十月~十二月の3ヶ月と考えられておりましたので冬の初めの月である十月は暖房が必要となる最初の月、そして十月は、火塞ぎの霊力のある「亥」の月ですから、暖房の使い始めにはぴったりの月だと考えられたのです。

さらにその月の「亥の日」となれば、怖い火災避けにはぴったりの日付ということで、十月亥の日は暖房の使い始めの日とされ、この日に囲炉裏を開いたり、炬燵をしたてたりしたのでした。

ちなみに、江戸時代には十月の最初の亥の日(一の亥の日)に武家が火を使い始め、町人は武家をはばかって12日後の二の亥の日から火を使い始めたそうです。

あれ?

寒くなったし、十月最初の亥の日でもあったしで、これは暖房を使い始めるしかないと、いうわけです。でも、ここまで読んでくださった皆さんの中には

この話って、旧暦の十月亥の日の話じゃないの?

と気づいてしまった方がいらっしゃるかも。はは、実はそのとおりです。

季節的に考えるとこの話は旧暦の日付で話をした方が違和感なく受け入れられるものと思いますが「十月が亥の月」という暦月と十二支の関係は新暦でも変わりませんし、日の干支の割り振りの方式から考えた「亥の日」が昨日であることは間違いないので、昨日2026/10/4(新暦)を十月亥の日といっても、暦の上の日付で考えれば間違いではありませんので、本日採り上げてみた次第です。

何より、こう寒くては旧暦の十月の亥の日まで、暖房使用を我慢するなんてことは私には不可能なので、こよみのページのかわうそとして暖房使用のいい口実としたわけです。ちなみに、今年(2026年)の旧暦での亥の日を新暦の日付で表すと

・一の亥の日 11/09 (丁亥 旧暦 10/01)

・二の亥の日 11/21 (己亥 旧暦 10/13)

・三の亥の日 12/03 (辛亥 旧暦 10/25)

となります。ね、11月の中頃まで暖房使用を待てなんて、酷な話でしょう?だから、「ここは新暦の十月亥の日で」という私の考えにもご理解いただけることでしょう。

そんなわけで十月亥の日であった昨日、私は胸を張って「暖房」を使い始めたのでした。皆さんの暖房使い始め時期はいつごろでしょう?

(『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、koyomi8kanri@gmail.com までお願いします。)


「編集後記」のようなもの

「亥の月亥の日は暖房の使い始めの日」なんてことを書いたのですが、亥の月亥の日(ただし「亥の月」は新暦の10月と考えましたけど)であった昨日は、観念上の「亥」ではなくリアルに動き回る「猪」を目撃しました。

「本格的に寒くなる前に、たっぷり食べておかなくちゃ」

そんなことを考えていたのか、我が家から50mほどしか離れていない休耕田で、つがいの猪がせっせと地面をほじくり返していました。

野生の猪は、なんとなく鈍重な見た目をしていますが、走り出したら速いですし、立派な牙を持つ猛獣なので、侮れない怖い相手ですから、刺激しないように、遠巻きに眺めるだけにしております。

「火塞ぎ」の力のあるといわれる猪ですが、当の猪は暖をとるために火を使うことはできませんから、寒い冬に向けて暖をとるためには脂肪を蓄えるしかないでしょうから、餌探しに必死なのでしょう。

猪にとっても人間(かわうそ?)なんかを相手にするより、今は目の前の地面をほじくって、土中のミミズを探して食べる方が重要。お互いに相手の邪魔をしないで、平和共存を図りたいものですね。

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