日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
【ぶらんこ】 (一説にポルトガル語から) 2本の綱か鎖で吊り下げた横木に乗って、前後に 揺り動かす遊具。 ゆさわり。ふらここ。鞦韆(しゆうせん)。春の季語。 《広辞苑・第五版》 公園などに必ず備え付けられている遊具、ブランコ。 誰でも一度はこれで遊んだ記憶が有るはずです。 このおなじみの遊具ブランコが季語になっているというのは意外に知られて いません。皆さんはご存じでしたか? ブランコは広く親しまれた遊具ですから季語に入っているのはよいとして、 あとはどの季節のものかが問題です。 結論から言えばブランコは春の季語。 ブランコと春、この間にどんな関係が有るのでしょうか。 どうやらブランコが春の季語となる過程はただの遊具としての存在ではなく て、農耕儀式に用いられたものとしての側面が作用しているようです。 例えばインドでは、冬至の日に女性がブランコにのり、太陽の再生を促す行 事が有ったといいますし、古代のギリシャでも農耕の始まる頃に女性がブラ ンコに乗って、これを動かすという行事が有ったそうです。 中国や韓国にも似たような行事はあり、中国では清明の頃に行われる寒食と いう行事の一つとして女性がブランコに乗ったといいますし、韓国では女性 の成人の祝いとして端午の節句にブランコに乗る行事が有るそうです。 面白いのはこの話ではブランコに乗るのが皆、「女性」だと言うことです。 女性は生命を生み出す性ということで、農耕儀礼では実りの担い手とされる ことが多々あります。このブランコの行事もこうした豊穣を祈る儀式の一つ としてとらえられたのではないでしょうか。 中国では、唐の玄宗皇帝が仙人になった気分にさせてくれる物として、ブラ ンコを「半仙戯(はんせんぎ)」などと呼び、唐の時代以後は宮廷には必ず 供えられた遊具でした。 春の季語として定着したのは、蘇軾の有名な漢詩、「春宵一刻値千金」の詩 が「鞦韆(しゅうせん=ブランコ)院落夜沈沈」で締めくくられている事に よるといわれています。 豊穣を祈る儀式、中国の宮廷に備えられた半仙戯から現代の公園に揺れるブ ランコまで、その歴史に思いをはせながら、春の公園で一日子供に戻ってブ ランコを漕いでみるのもよいかもしれません。
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