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【紫陽花】(あじさい)
 アジサイ科(旧ユキノシタ科)の観賞用落葉低木。
 ガクアジサイの改良種とされる。幹は叢生、高さ約1.5メートル。
 葉は広卵形で対生。初夏、球状の集散花序に4枚の萼(がく)片だけが発達
 した装飾花を多数つける。

 日数の経過や土質により、色が青から赤紫へ変化するところから、七変化と
 もいう。花は解熱に、葉は瘧(おこり)の治療に用いた。
 広くはサワアジサイ・ガクアジサイなどの総称で、ヨーロッパでの改良品種
 をセイヨウアジサイ・ハイドランジアなどと呼ぶ。
 あずさい。四片(よひら)。夏の季語。
 万葉集(20)「紫陽花の八重咲くごとく」
   《広辞苑・第七版》

 紫陽花という花の名前には、いろいろと楽しい話題があります。
 そのひとつが、

  化花(ばけばな)

 色がさまざまに変わることから、こう呼ばれるようになったのでしょう。
 同じように「七変化(しちへんげ)」という別名もあります。
 「七変化」くらいならまだしも、「化花」という語感は、紫陽花にとっては
 少しイメージダウンのようにも感じられますね。

 紫陽花は、山野に自生する額紫陽花(ガクアジサイ)の改良種です。
 日本固有の植物で、日本を訪れたヨーロッパ人が持ち帰り、品種改良したも
 のが「ハイドランジア」などとして逆輸入されています。

 さて「紫陽花」という文字は、中国の『白氏文集』に登場する花の名前を、
 「これこそアジサイに違いない」と、昔の日本人が思い込んで当てたもので
 す。

  「紫陽花」は「アジサイ」だ

 と知らなければ、とても読めない文字です。それもそのはずで、この文字は
 もともと日本で「アジサイ」と呼ばれていた花に、縁もゆかりもない中国の
 花の名前の文字を無理やり当てはめたものだからです。

 昔々、中国は日本にとって偉大な先輩であり、日本はその文化を深く学びま
 した。動植物の名前の文字もまた中国から学びました。日本の動植物の名を
 表す文字として、中国でその動植物名として使われていた漢字をそのまま当
 てはめて使うことにしたのです。

 日本で広く見かける「アジサイ」についても、中国ではどんな名が付いてい
 たか、その名称を文献の中から探し当てようとしたのですが、なかなか見つ
 からず、ようやく『白氏文集』に登場する「紫陽花」こそその花だろうと見
 当が付けられ、この文字がアジサイに当てられることになりました。

 ところが、これが大間違いでした。
 いくら中国の文献を探しても「アジサイ」の中国名が見つからなかったのは
 当然です。なにしろ、中国にはアジサイが存在しなかったのですから。
 こうしてアジサイは、まったく無関係な花の名であった「紫陽花」という文
 字が与えられ、今に至っているのでした。
 ちなみに「アジサイ」という和名は

  集真藍(あづさあい)

 の意味だという語源説があります。
 「真の藍が集まった花」とは、アジサイの花色と形状をよく表していて、と
 ても美しい名前です。私はこの「集真藍」のほうが「紫陽花」よりも佳い名
 前だと思うのですが、いかがでしょうか?

 もっとも、今更「アジサイ」の名前の文字を変えることなど、出来ないでし
 ょうね。

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