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【厚顔無恥】(こうがん むち)
 [文選、孔稚珪、北山移文「あに芳杜をして顔を厚くし、薜茘(へいれい)
 をして恥ずる無からしむべけんや」]
 他人に対する態度があつかましく、恥を知らない様子。無恥厚顔。
 →【厚顔】
   《広辞苑・第七版》

 辞書の語釈に登場する「芳杜」は「芳しい杜若(カキツバタ)」の意味で、
 薜茘はオオイタビというイチジク属の蔓性植物だそうですので、砕いていえ
 ば、「芳しい杜若をして顔を厚くさせ、オオイタビをして恥を知らない状態
 にさせることがあってはならない」といったところでしょう。

 ※Wikipedia「オオイタビ」の解説 → https://x.gd/9hjMA

 『厚顔無恥』はその前半部分の『厚顔』だけでも「あつかましく、恥を知ら
 ない、ずうずうしい様子を表す言葉になります。また『面の皮が厚い』でも
 同様の意味となります。

 人間にとって、顔は外界、つまり社会に向ける窓口のようなものです。この
 窓口は大変敏感に人間の内面の状況に反応するように出来ているようで、恥
 ずかしい行為をしてしまったときなどには、直ぐにこの窓口である顔が反応
 します。この様子が『赤面』で、「はずかしくて顔を赤らめた」という状態
 です。

 ところが、普通であれば赤面してしかるべき行為をしておきながら、顔が赤
 らむ様子もないような人がいます。こうした人を「厚顔」であるとか「厚顔
 無恥」と呼ぶわけです。

 きっと、顔の皮が厚いと、その皮の分だけ感覚が鈍くなって、赤面などしな
 くなるのでしょうね。

 昔と今とでは私たちの生活環境や社会が変化したでしょうか、昨今はこの変
 化に対応するために人類の面の皮が徐々に厚くなりつつあるようで、厚顔無
 恥な人が増えてきているような気がします。

 これは、変化に対応した「進化」なのでしょうか。
 それとも恥を失うという「退化」なのでしょうか。

 かく言う私自身も、この人類の進化の波にのって、面の皮の厚みが増してき
 ている一人のようです。そうでなければ、自分の行いを棚に上げて赤面する
 ことも無く、こんな記事を書くことなんか出来るはずないですからね。

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