日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
【爾は爾為り、我は我為り】(なんじはなんじたり、われはわれたり) 孟子 万章・下 に有る言葉で、元は春秋時代、魯の国の大夫、柳下恵の言 葉だとされます。 「お前はお前だ、私は私だ」 という単純な言葉です。元はもう少し長くて、 「私の傍らで裸になったり、不作法な行いをするものがいても、お前はお 前だ、私は私だ。その不作法な行いで、私を汚すことは出来ない。」 と言う意味の言葉が書かれています。 柳下恵、本名は展禽、字は季と言う人物。柳下という地に居り、死後に恵と 諡(おくりな)されたことから後世、柳下恵と呼ばれるようになりました。 流俗に動かされること無く、自ら信じるところを行った賢大夫として知られ ています。 「時代が生み出した犯罪」だとか「現代社会が生み出した心の闇」だとか、 つかみ所のない言葉を耳にする度、まるで原因が本人以外のところに有るか のように片付けてしまう風潮には嫌気がさします。 時代がどうとか、世間がどうとかいっても、それに同調するしないは本人の 選択なのに。 とはいいながら、周りがしているからとそれを言い訳にしたいという弱さは 誰にでも有ります。 爾は爾為り、我は我為り 柳下恵にもそうした弱さあったのでしょうか。 もしかしたら、この言葉は強い人の言葉ではなくて、弱さを自覚した人が言 い訳してしまいそうな自分を切り捨てるために使った言葉なのかもしれない と、ふと思いました。 柳下恵は強かった人ではなく、強くなった人だったのかなと。
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