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【顰に倣う】(ひそみにならう) (「西施の顰に倣う」ともいう) [荘子天運]西施が心臓の病のために苦しげに眉をひそめたのを醜女が見て 美しいと思い、自分もそのまねをしたが、それを見た人は気味悪がって門を とざした。いたずらに人の真似をして世の物笑いになることにいう。また、 他人に見倣ってすることを謙遜していう。 《広辞苑》 ちなみに西施(せいし)は春秋時代の越の美女。 越王勾践が呉に敗れて後、呉王夫差の許に献ぜられ、夫差は西施の色に溺れ て国を傾けるに至ったといわれるほどの美女です。 広辞苑は「人は気味悪がって門を閉ざした」とだけ書いていますが、元の話 には、 「村の金持ちは堅く門を閉じて外に出ず、貧乏人は妻子を連れて村を逃 げ出した」 と書いています。 顰みにならったことのどこがいけないのかといえば、それは眉を顰めれば美 しく見えるのだと短絡してしまったこと。顰めたのが傾国の美女西施であっ たから美しく見えたのだということを忘れて、ただその所作を真似ればよい と誤解してしまったことです。 そのため、うわべだけ真似ることの愚かさを表す言葉として使われます。 とはいいながら、人を真似ることが何から何まで悪いわけではありません。 尊敬する人物の立派な行いを自分も真似てみるなどは、悪いことではありま せんね。真似で終わってはそれまでのことですが、始めは真似であっても、 それがやがて本物に変わることも有りますから。ただあまり立派な人の真似 をすると、「私ごときが」と気恥ずかしくなってしまうもの。そんなときに は、顰みにならうの二番目の意味、「他人に見倣ってすることを謙遜してい う」として使います。 ちなみに、呉王夫差と越王勾践といえば臥薪嘗胆(がしんしょうたん)の故 事の元になった二人。西施は越随一の美女として有名で、夫差を堕落させる 目的で呉に送り込まれたのだといわれています。
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