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【上の空】(うわの そら) 1.天の上。空中。 源氏物語夕顔「山の端の心も知らで行く月は上の空にて影や絶えなむ」 2.他のことに心が奪われて、そのことに精神が集中しない状態。 心が浮き立っておちつかないさま。 源氏物語薄雲「川面のすまひ、いとど心細さまさりて上の空なる心ちのみ しつつ」。「親の意見など上の空で聞いている」 3.いいかげんなさま。根拠がなく、不確かなさま。 平家物語 6「御書を給はらで申さむには、上の空にや思し召され候はんず らむ」 《広辞苑・第五版》 源氏物語にも登場していることからも「上の空」という言葉が古くから使わ れていた言葉なのだとわかります。言葉にも寿命があるでしょうから、この 言葉はなかなか長寿の部類に入りそうです。 さて、その長寿の言葉「上の空」の意味ですが、始めは空の上のとらえどこ ろのないもの、あやふやなものだったようです。 昔々のその昔、空はずっと続くものではなくて限りある高さだと考えられて いました。空の高さが限りあると言うことならその上は何かというのが、 上の空 というわけです。どこからととらえどころが無いところにあるので、不安定 なあやふやなものととらえられたようです。 古い時代は主として恋愛の中で感じる不安を表す言葉として使われていたよ うです。「あなたがいないと、拠りどころがなくて不安」という意味であっ たようです。 現在では、何かに心を奪われて心ここにあらずという状態を指して使います。 心を奪うものの内容は様々。現代ではこれが心配の種だったなどと言うこと が多いことでしょう。なかなか辛いですね。 心を奪うものが魅力的な人なんていうことなら「上の空」もまた幸せな状態 なのですが。
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