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【薄ら氷】(うすら ひ)
 (古くはウスラビ)薄く張った氷。
 特に、春さきの氷。うすごおり。うすらい。春の季語。
   《広辞苑・第五版》

 立春に対応する七十二候は

  東風凍を解く

 東風が吹いて硬く凍りついた大地や氷も緩み始めるということでしょう。
 春に向かって、氷も厚みを増すことを止めてこれからは薄らいでいくことに
 なるということでしょう。
 ということで、立春の日である今日(2009/2/4)はこの言葉、「薄ら氷」を
 取り上げてみました。

 二十四節気が生まれた大陸内陸部は、日本に比べてずっと寒い場所ですが、
 気温の変化は日本でのそれより太陽の動きにずっと敏感に反応します。

 冬至を過ぎて太陽が少しずつ北上を始め、太陽が大地に注ぐ光が強まり始め
 ると、二十四節気の生まれ故郷では間もなく気温も上がり始めます。
 立春の時期は冬至から一月半程が経過していますから、体感的にも冬の一番
 厳しい時期を脱したことが実感出来る頃なのだと思われます。

 この辺の事情は四方を海に囲まれた日本ではちょっと異なります。大地より
 も冷えにくくまた暖まりにくい大量の海水に囲まれた日本の気温の変化は太
 陽の動きよりワンテンポ、ツーテンポ遅れて起こります。
 二十四節気の生まれ故郷では既にいくらか暖かくなった立春の頃が、日本で
 は一番寒い時期に当たっています。「立春」とはいっても

  春は名のみの風の寒さや

 というのが実感というのがこの時期なのではないでしょうか。
 こんな風に暦の上の季節(二十四節気)と体感的な季節がちょっとずれた日
 本ではありますが、さすがにもうこれ以上寒くはならない時期ですあること
 は間違いなさそうです。
 立春とはいってもいきなり氷が融け出すというわけにはいきませんが、その
 氷ももうこれ以上厚みを増すことはなさそうです。

 厚かった氷が少しずつ薄くなって、何時しか全て融けてしまう春が間近に迫
 っています。川や沼、水溜まりに張った氷を見つけたら、さて昨日よりどれ
 だけ薄くなったかなと眺めることが楽しい季節になったようです。

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