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【夏炉冬扇】(かろ とうせん) [論衡逢遇「作無益之能、納無補之説、以夏進炉以冬奏扇」] 夏の火鉢に冬の扇の意で、時機にあわない無用の事物のたとえ。 「六日の菖蒲あやめ十日の菊」の類。 芭蕉、許六離別ノ詞「予が風雅は夏炉冬扇のごとし」 《広辞苑・第五版》 本日頂いたお便りの中でこの言葉が使われておりましたので、これはコトノ ハに取り上げるにはよい言葉だと思い、早速の掲載です。 言葉の意味は、辞書の説明に任せるとして、以下は本来の言葉の意味を離れ た私の「夏炉冬扇」雑感です。 この言葉は辞書の説明にあるとおり、夏に炉を勧め冬に扇であおぐようなも ので、時機にあわない無用なもののことを指す言葉ですが、考えてみると、 時機に合わないというのは、ただ現在という目の前の「時」を考えた場合で す。 本来、寒い冬の時期を過ごすために作られた炉が夏に不要になるからといっ て、炉が何の役にも立たないものだということにはなりません。炉の時節が 到来すれば、時機があえば炉は炉の役割を果たすことが出来るようになりま す。 時機は周囲の状況、炉や扇が自分だと考えれば、炉は炉、扇は扇としての本 質を守って時機を待つというのもよいのではないかなと思います。 常に時機にあうような在り方が出来れば、それが望ましいのでしょうけれど、 そう器用に生きて行けないのであれば、 予は夏炉冬扇のごとし と拙を守る炉や扇のような在り方もよいものだと思います。 時機にあわせようとして、中途半端なものになるより、役に立たない夏の炉 となって、冬を待ってみようかなと、そんな風に思いませんか?
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