日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
【木の芽雨】(きのめあめ) 春、木の芽どきに降る雨で、その成長を助ける雨。 徳島県では、「木の芽起し」「木の芽萌やし」、長崎県北松浦郡・鹿児島県 肝属郡では「木の芽流し」などという。 《雨の名前(小学館)から抜粋》 二月の末の頃から三月の始めの頃になると、寒の戻りがあるとはいえ、季節 は春と感じる日が増えてきます。 そんな時節に降る雨が木の芽雨です。 冬の間、身を固くして寒さに堪えていた木の芽の芽吹きをうながす雨です。 東北の田舎育ちでしたので、遊び場は田んぼのあぜ道や河原や里山。木の芽 雨の降る頃は、どの遊び場にいても「土の匂い」を感じました。 土の匂いは、温かくてどこか湿った匂い。香りとも臭気とも違う、匂いでは ない匂い。巧く云えませんが、匂いと云うより気配といった類のものだった ように思います。 あの土の匂いの中に感じた「温かくてどこか湿った」ものは、この時期に降 る木の芽雨のもたらした温かい湿りだったのでしょう。 私が土の匂いを感じる頃になると、田んぼの畦には蕗の薹が顔を出し、河原 では葦の若芽が姿を見せ、里山では蕨(わらび)や薇(ぜんまい)が頭をも たげ始めました。 昨日の朝は、久々に傘のご厄介になりました。 雨は降っていましたが、寒さは感じません。 もう冷たい冬の雨ではありませんでした。 舗装された道路には、春の雨で目をさましそうな草の姿はありませんでした が、遠くに霞んで見えていた山の中では、春の雨に打たれて目をさました蕨 や薇が、きっとあったことでしょう。
日刊☆こよみのページ スクラップブック