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【風鈴】(ふうりん)
 小さい鐘のような形をして、中に舌の下がっている金属製・陶器製・ガラ
 ス製などの鈴。
 吊しておくと風に吹かれて快い音を発する。
 風鐸(ふうたく)。
 夏の季語。〈書言字考節用集〉。「軒下に風鈴を下げる」
   《広辞苑・第六版》

  「何処にしまったかな?」

 梅雨あけして、夏の暑さが押し寄せてきました。
 暑さにはかなり強い私ですが、それでも押し寄せてきた猛烈な暑さには辟易
 するものがあります。

 暑さには結構強いが、冷房には滅法弱くて、すぐに体調を崩してしまう私は
 出来る限り自然の風に頼って、この暑さを乗り切りたいと思っているのです
 が、ここまで暑くなってしまうと窓から入ってくる風も生ぬるく、お世辞に
 も涼風とはいえません。それでも無いよりはましですが。

 無いよりはましの生ぬるい風を、気分だけでも「涼風」に変えたいと、未開
 封の引越荷物の中から探していたのは、風鈴です。

 打ち水だったり、氷だったり、浴衣だったり、団扇だったり。
 暑い夏を少しでも快適に過ごすための工夫は、色々あります。
 風鈴もそうした夏を快適に過ごすための工夫の一つでしょう。

 他のものは気温を下げたり、体感温度を下げる効果の期待されるもので、直
 接に暑さを押さえる効用があるものですが、その点では風鈴は何の役にも立
 ちません。ただ、窓の辺りで「チリリ~~ン」と鳴るだけです。
 ですが、この「チリリ~~ン」を聞くと、なぜか涼しくなった気がします。

  「あ、あった、あった。」

 ゴソゴソと探していた二つ目の段ボール箱の中から、風鈴が収められている
 木箱が出てきました。私の愛用の風鈴は、風鈴とは云いながら鈴や鐘のよう
 な形のものではありません。

 四本の火箸がつり下がり、その間に舌のついた金具がぶら下がっているとい
 うものです。風が舌を揺らすと舌に繋がった金具が、その周りに下がった火
 箸に当たり音を発する、火箸風鈴というものです。

 風が吹くたびに、四本の火箸は微かな、長く尾を引く澄んだで鳴ります。
 本来は暖をとるために使われる火鉢に使われるはずの火箸が、涼を得るため
 に使われるとは、なんだか面白い組み合わせの風鈴です。

  「あ、風だ」

 窓辺で火箸が鳴っています。
 火箸を鳴らせた風の勢いは弱く、なかなか私のところまでやって来てくれま
 せんでしたが、前触れの風鈴の音を聞くだけで、もういくらかの風を感じた
 気がしました。

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