日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)

【凹む】(へこむ)
 [自五]
 1.物の表面がくぼむ。おちこむ。「車体が凹む」
 2.損をする。減る。浄瑠璃、心中重井筒「四百目というかねを何するとて借
  つたぞ。くひこんだかへこんだだか」。「100円凹む」
 3.やり込められて屈服する。よわりくじける。「反撃されて凹んでしまう」
  《広辞苑・第六版》

 どちらかというと、新しい言葉を使うことには慎重な方だと思う私です(主
 観的見解ですけど)。従来の言葉で当たり前に言い換えられる言葉なら、極
 力、新語を使うことは控えようと思っています。とは言いながら、

  この言葉は、使いたいな

 と思う言葉もあります。
 そうした言葉の一つが、冒頭に書いた「凹む」という言葉。

  「さすがに、これは凹みますね」

 凹むそれのみでは新語とは言えないでしょうが、これを自分の受けた精神的
 な衝撃、またその衝撃によって陥っている現在の精神状況を示すような場合
 に使うようになったのは比較的最近のことのように思いますから、用法的に
 は「新語」の仲間に入れてもよいと思います。

 「凹む」には語釈3 の「やりこめられて屈服する」という用法もありるよう
 ですが、やりこめられて屈服するという意味には、こちらに非があって言い
 返すことが出来ない状態というように感じます。前提としてこちらになにが
 しかの「非」がある気がします。しかし現在使われる「凹む」には、そうし
 た理非善悪とは関係なく、ただ結果として陥ったやるせない気持ちといった
 ものを表す使い方があると思います。

 「凹む」についてそんな風に感じる私が、この言葉を使いたいなと思うこと
 がありました。
 ある日、メールマガジンの返信用アドレス宛にこのメールマガジンの返信の
 形で届いたメールに、ただ一行

 「当該メールが迷惑になっていますので、直ちに送信を停止して下さい。」

 とありました。
 凹みました。

 「直ちに」とあるあたりに、ご立腹の様子が窺えます。
 まあ、毎日毎日、愚にもつかない(おっと、自分で言ってしまっては身も蓋
 もない・・・)長文のメールマガジンが届いたら、確かに迷惑。お気持ちが
 わからないわけではないのですが。

 ただ、このメールマガジンは

  1.購読希望者が購読登録する
  2.登録されたメールアドレスに登録の承認確認のメールが届く
  3.承認確認がなされると、登録されたメールアドレスに配信される

 という手続きが行われたうえで配信されるので、例えば私が勝手に送り付け
 ているというわけではありません(この辺、誤解されている方もいらっしゃ
 るようですが)。まあ、何年も前に登録したことなどすっかり忘れてしまっ
 ているということはあるでしょうから、「登録した覚えなどない」と思われ
 ても仕方ないとは思います。私も忘れっぽい方なので、よくわかります。

 といっても、この配信停止を求めてきた方に、そんな説明をするわけにもい
 かないでしょう。家族でメールアドレスを共有しているような場合もないと
 は言えないので、本当にご本人には身に覚えのない迷惑メールであるとい可
 能性もありますから。
 そんなことを考えながら、配信停止処理(こっちは発行者側でも出来る)を
 行って

  「配信停止の処理を行いました。
   これまでのご購読、ありがとうございました」

 と返信しましたが、送信ボタンを押した後には、なんともやるせない気持ち
 が残りました。こんな時の気持ちを表すにのには「凹む」って言葉、ぴった
 りですね。

 まあ、「凹んでもお湯をかけたら元どおり」という形状記憶合金並みの精神
 なので、すぐ復活しますけれど(おかげで、本日はコトノハ書けたし)。
 鍋や薬缶は凹んだら直さなければそのままですが、その点人間は自力復旧出
 来る分、鍋、薬缶より優れてるかな??

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