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【贈り名・諡】(おくりな) 人の死後に、その徳をたたえて贈る称号。 後のちの諱(いみな)。諡号(しごう)。 《広辞苑・第六版》 古代中国に始まった慣習で、帝王や貴族など、高貴な人物の死後にその人物 が生前に行った事績などにもとづいて贈られた名前です。 例えば、徳が高く、国をよく治めた優れた「文王」、軍事活動においてめざ ましい成果を残した「武王」や「武帝」などが分かりやすい例です。 また、「哀帝」などという諡をみれば、「ああ、夭折したのか」と大体見当 がつきます(若くして亡くなった帝王の死を悼む意味。若死にしたので見る べき事績もないので仕方が無いとも言えますけど)。 諡は死後にその事績を評価されて贈られるものだと云うことで、臣下が先帝 の事績を評価して勝手に諡を決めるのなんてけしからんと、諡を廃して、 始皇帝、二世皇帝、三世皇帝・・・・ と称することにせよと命じたのが、有名な秦の始皇帝。 もし、始皇帝にそれまでどおり、諡が付けられたとしたらどんなものになっ ていたでしょうね? ◇贈り名台風 お天気博士、倉嶋厚さんの本(「季節よもやま辞典」)を読んでいたら、 「贈り名台風」という言葉に行き当たりました。 台風は、その年の発生(希にいきなり「出現」することも)順に、一号、二 号・・・と呼ばれますが、時折、そうした番号ではなくて特別な名前で記憶 される台風があります。 「伊勢湾台風」 「室戸台風」 「洞爺丸台風」 といったものが、その例です。 いずれも大きな災害を引き起こした台風で、殊に被害の大きかった地域の名 前を冠して呼ばれます(「洞爺丸台風」はこの台風によって沈没し、多数の 死者を出した船の名前)。こうした台風を「贈り名台風」と云うのだそうで す。 一号、二号は生まれた時に決まりますが、贈り名台風の名前は、台風が過ぎ 去った後に作られたものですから、確かに「贈り名(諡)」と呼んでよいも ののようです。 人間の方に付けられる贈り名(諡)については、余程酷い人物でない限り、 悪名は避けるのが普通(ダメな人でも、一つくらいましなところはある?) のですが、台風の場合、大きな被害を生んだ場合に贈り名されことになりま す。人の場合の贈り名はその徳を、台風の贈り名はその災害を忘れないため に名付けられるもののようです。 大きな台風被害といえば、先日(2019/9/9)関東に上陸し、千葉県を中心に大 きな被害を残した台風15号がありました。あれから半月あまりが経過しまし たが、千葉県ではいまだに停電している地域もあるとか。 この台風も、もしかしたら「贈り名台風」の仲間入りをするかも知れません ね。「贈り名されるほどの台風」は、あまりあって欲しくないものですね。
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