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【耳触り】(みみざわり)
 聞いた感じ。耳当たり。
 「耳触りのよい言葉」
   《広辞苑・第七版》

 ついに登場しました、「耳触り」。
 広辞苑の第七版を引いていて、偶然この言葉が目に入りました。
 驚きましたが同時に、ついにきたかという思いも。

 「耳触り」は「耳障り(みみざわり)」の誤用から生まれた新語ですね。
 広辞苑も一つ前の第六版だと見出し語に「耳触り」はなく「耳障り」のみ。
 耳障りを引くと

 【耳障り】(みみざわり)
  聞いていやな感じがすること。聞いて気にさわること。
  「耳障りな話」「耳障りな雑音」
  △「耳障りがよい」というのは誤用。
   《広辞苑・第六版》

 「耳障り」の誤用としての「耳触り」はおそらく「肌触り(はだざわり)が
 よい」等からの連想で「障り」を「触り」と取り違えてうまれたものだと思
 われます。この誤用があちこちに蔓延ってきて、ついに「新語」として広辞
 苑に認知されるに至ったようです。

 広辞苑の第六版が刊行は2008(平成20)年、第七版刊行は2018(平成30)年
 と10年の差。この10年の時代の差で誤用から新語となった「耳触り」。
 こうやって言葉って変わってゆくんだなと実感させてくれるこの変化。
 でも、やはり「みみざわりがよい」という言葉を耳にすると、古い私の脳は

  「それ違います!」

 と警告を発してきます。
 まあ、そんなに老い先も長くないだろうし、こんな警告を発してしまう古い
 脳味噌でも修理せず、個人的には「耳障り」のみで暮らしていこうかなと思
 って下ります。

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