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【薬玉】(くすだま)
 1.5月5日の端午に、不浄を払い邪気を避ける具として簾(すだれ)や柱に掛
  け、また身に帯びたもの。
  麝香(じゃこう)・沈香(じんこう)・丁子(ちょうじ)など種々の香料
  を玉にして錦の袋に入れ、糸で飾り、造花に菖蒲(しょうぶ)や蓬(よも
  ぎ)などを添えて結びつけ、五色の糸を長く垂れる。中国から伝わり、平
  安時代に盛んに贈答に用いた。
  続命縷(しょくめいる)。長命縷。夏の季語
 2.式典・運動会などの際に用いる、薬玉1 と同形の飾りもの。
  造花などで作る。玉が二つに割れて、中から五色の紙片などが散るものも
  ある。
   《広辞苑・第六版》

 本日は5月6日。
 1日過ぎてしまいましたが、5月5日は端午の節供でしたので、本日は端午の
 節供に係わる「薬玉(くすだま)」という言葉を採り上げてみました。
 「薬玉」と書くと何のことだろうと想われる方も多いと思いますが、「く
 す玉」と書けば

  ああ、あれか

 と、その姿を思い浮かべる方も多いでしょう。
 「くす玉」と書くと、今では大半の方が二つに割れて中から紙片が舞い散る
 ものを思い浮かべることでしょう。しかし、元々は様々な香料を詰めて作っ
 た薬の玉だったのです。

 二つに割れるくす玉において、玉を割るための仕掛け紐としか見られないあ
 の紐も、本来は「五色の糸」で、古代中国において森羅万象を形作る五行が
 調和した状態を表すものだったのです。

 薬玉は中国から伝わり、宮中で飾るようになったものですが、初期の頃の薬
 玉は質素なもので、五色の糸に蓬(よもぎ)や菖蒲(しょうぶ)を貫いたも
 のに過ぎなかったそうです。それが次第に美しく飾られるようになり、現在
 のくす玉にまで至ったようです。

◇節供と薬玉
 端午の節供の時期といえば、野山には草木が生い茂る時期です。
 野に出れば、香草や薬草の類をそこかしこで見つけることのできる時期でし
 たから、こうした香草や薬草を集めて薬玉を作るのには、ちょうどよい時期
 でした。

 また、旧暦時代の五月は梅雨の時期で、ものが傷みやすく、病気にもなりや
 すい悪い気の多い月だと考えられていました。ですから、そうした悪い気
 (邪気)を祓うために、香り高い薬玉が使われたものと考えられます。邪気
 はよい香りが苦手なようです。

 本来の薬玉は柱にかけたり、身に着けたりして邪気を遠ざけました。そして
 九月九日の重陽の節供には、薬玉と同じく芳香を放つ茱萸袋(しゅゆぶくろ)
 を作り、香りの薄くなってしまった薬玉と取り替えたそうです。

 現在の暦での五月は初夏の気持ちのよい季節で、「邪気の満ちる月」という
 感じはありませんが、気持ちのよい季節で野遊びには最適です。野原に出て
 香草や薬草を摘んで、家族の一年の無病息災を祈って、薬玉を作ってみては
 いかがでしょうか。

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