日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■豚の年 今年は「亥年」。日本では「いのしし(猪)」の年と言い、干支の飾り物や 図柄はどう見ても牙の生えた、猪(あるいはその子供の「瓜坊」)です。 ある時、アメリカで人気のあったTVドラマの「ER 緊急救命室」を見てい たら、年末の一際忙しい時に産気づいた華僑の妊婦さんが担ぎ込まれて来る 場面が登場しました。そこで妊婦さんに付き添ってきた旦那が、 何とか今年中に産ませてください。今年は戌年、来年は豚(ブタ)年、 ブタ年生まれの子は怠け者になるって親がうるさく言うんです という場面がありました。 「豚(ブタ)年」ってそりゃあ「猪(イノシシ)年」だろう。日本語への訳 がおかしいんじゃないかとかわうそ日記(Web こよみのページ内にある日記) に書いたところ、読者の方に いえ、中国では「亥年」は豚年でいいんです。 と教えて頂きました。 あわてて調べてみると、その通り。中国や韓国など中国暦の影響を色濃く受 け干支を使用している国では亥年は豚年。猪(イノシシ)と考える日本が特 殊なのだと解りました。 ◇「猪年」と「豚年」の関係 干支は中国生まれ。本家で「豚年」だったものがどうして日本では「猪年」 になってしまったのでしょうか? 謎の答えは漢字の表す意味の違い。 実は中国においても「亥年は猪年」なのです。問題はこの「猪」という文字。 この文字の本来の意味は日本で言うところの「豚」を意味する言葉。 では日本で言うところのイノシシはなんというのかというと中国では「野猪」、 要するに「野生の豚」と言うことなんですね。 (では、「豚」と言う文字は? と調べたら本来は生まれたばかりの子豚を 意味する文字だったとのこと。) おそらく、日本に干支が持ち込まれた時には亥年は中国では家畜のブタを意 味する「猪」の年として伝わったのでしょうが、日本には家畜としてのブタ がおらず、一番近い物として野生の豚である「イノシシ」を「猪」にあてて 解釈したのではないでしょうか。 こうして、ちょっとした事情で亥年は、中国ではブタ年。日本ではイノシシ 年になってしまい、そうして千年以上の歳月が経過。 元は家畜のブタだったとはつゆ知らず、今年の日本の年賀ハガキの図柄は精 悍(?)な野生のイノシシの姿一色。 ◇ブタ年の評価 最初に書きました「ER 緊急救命室」の会話からすると豚年生まれは怠け 者として嫌われるようにも思えたのですが、中国や韓国では喜ばれることも あると聞きました。なぜか? それは、ブタはあくせくしないのに福々しく尚かつ子だくさん。お金があっ て子供が沢山(子孫繁栄)の目出度いイメージがあるそうです。 先の「ブタは怠け者」と「ブタはあくせくしない」は表裏一体。見方で評価 が 180°違うってことですね。 更に韓国では豚とお金を意味する語のハングルの綴りが同じであることで、 金運がよいという意味となり益々有り難がられると聞きます。なるほど。 と言うことで今年は亥年、豚年。出来れば「あくせくせず金運アップ」の年 となるといいですね。年末に、ああ怠け者の年で終わったと言うことが無い ように願いたいものです。 ※注意 日本でも弥生時代にはイノシシを家畜として飼っていたそうです。ただ、仏 教伝来後は、獣肉食が嫌われましたので、奈良時代以後はイノシシの家畜化 の伝統は途絶えました。
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