日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■天神様と雷 今日は菅原道真ゆかりの「雷記念日」ということで、雷にかけて天神様の話 等を書いてみましょう。 菅原道真といえば、学者でありかつ政治家。 道真は宇多天皇に信任され右大臣にまで昇りましたが、道真の政治力増大を 恐れた左大臣の藤原時平によって讒訴され、醍醐天皇によって大宰府へ権帥 (ごんのそち、太宰府の長官代理のようなもの)として左遷されました。 ちなみに道真が太宰府に左遷された日、1/25は「左遷の日」とされています。 さて左遷された道真はその任地太宰府で無念のうちに没しました。 するとその頃から京の都では落雷と落雷が原因となった火災が多発。道真を 陥れた藤原氏からも大納言の藤原清貴が落雷が原因で死亡するという事件が 起こります。 大変すぐれた才能を持った人を「天才」といいますが、この言葉は本来 天下の鬼才 を省略したもので、こうした人に絶した能力を持つ人は強い霊力のようなも のを持っていると考えられました。道真も大変すぐれた人物でありましたか ら、こうした強い霊力を持っていたという風に考えられるようになり、その 強い霊力を持った人が、怨みを残して死んだとすれば 怨みを残した死 → 関係者への祟り と連想は進みます。こうなると「身に覚え」のある人たちは、明日は我が身 かと祟りをおそれます。 殊に今回の災害は「雷」。雷は 雷 = 神鳴り で、天の神が発てる音や光だと考えられますから、道真は実は天の神(天神) の生まれ変わりで、この人物を策略を持って殺して(実際に殺した訳ではあ りませんが)しまったので、神様に戻った道真が祟りを為しているのだと考 えました(このころ、「道真=火雷天神」と考えられた)。 さて火雷天神道真の怒りを鎮めるためにはどうするかと考えた朝廷は元々京 都の北野の地にあった火雷天神を祀っていた場所に北野天満宮を建立して、 道真の祟りを鎮めようとしたしました。また、太宰府にも太宰府天満宮を建 立してなんとか天神道真の怒りを鎮めようとしたのでした。 そのあわて振りを見ると、やはり「身に覚え」があったってことでしょうね。 ◇天神様は、学問の神様・豊作の神様 さてこうして元々は道真の祟りを鎮めんがために生まれた天神様信仰でした が、今では学問の神様として、また豊作を約束してくれる神様として信仰さ れ、全国に分社が出来ています。 学問の神様となったのは、道真が当時は随一と言われるような学者であった ことから、その学徳にあやかったものです。天神様の縁起は知らなくとも受 験シーズンにお参りしましたという方もいらっしゃるかも。 天神様はまた豊作の神様でもあります。こちらはなぜかといえば、「雷」か らです。 雷は「稲妻(いなづま)」ともいいます。 雷は天から地へ向かって真っ直ぐに落ちてくるように見えます。これは天の 力が大地に向かって流れ込んでいるように見えます。そしてこの雷が多発す る時期は稲の花が咲いて実を実らせ始める時期。 天の力が雷となって大地に落ちると、それが稲に働きかけて実りとなるのだ と古代の人は考えました。雷は正に稲を実らせる「稲妻」だったのです。 この考えがありましたから、雷の神様、火雷天神とされた道真を祀る天神様 は、豊作を約束する神様となって、実りの秋ともなれば各地でその年の秋の 収穫を感謝する秋祭りの舞台となりました。 さあ今年、雷の神様、天神様はどれくらい活躍なさるおつもりか? これからの夏場が雷のシーズンですから、じっくりと天神様の活躍の様を拝 見することに致しましょう。
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