日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■盆明け雑話 今日は多くの地域では盆明けの日でしょう。 京都では有名な五山の送り火が行われ、多くの地域で精霊流しが行われます。 この時期家族の元に戻ってきていたご先祖様の霊がこうした行事で送られて ゆきます。 ◇ご先祖様の霊は山から来て、海へ帰る? 8/13号の盆迎えの記事で 「ご先祖様は山から摘んで来る盆花に乗って帰ってくる」 と書きました。つまり山から帰ってくるわけです。 これに対して帰って行く先は、多くの地域で行われる精霊流しが示すとおり 川を下ってゆきます。川の行き着く先は海ですから、ご先祖様は山から来て 海へ帰ってゆくということになります。 来たところと帰ってゆくところが違っているのが不思議ですが、山も海も人 の住む場所で無いということでは共通します。人の住む場所でない海や山は 祖先の霊や神の住む異界なのでしょう。 山から里を通って海へ帰るというのは、何か川の流れそのもののようです。 山に降った雨が川となって里の田畑を潤し、様々な穢れも洗い流して海へ去 ってゆくという水の循環のようです。 ◇盆踊りは「魂鎮め」 最近の盆踊りは地域の交流のための行事としての面が強まり、櫓を建ててそ の回りをグルグルと踊る輪踊りが一般的になっていますが、その始まりは祖 先の霊を慰めるための魂鎮め(たましずめ)の行事で、縦に長く並んで踊る ものだったと言われます。祖先の霊を鎮め、そして人の住む世界から異界へ 送りとどける踊りだったようです。 古くから続く盆踊りの中には踊りの参加者が頬被りしたり、夜なのに笠をか ぶって踊ったりするするなど、ちょっと不思議な伝統があるものがあります (秋田西馬音内の盆踊りなど)が、こうした扮装は魂鎮めの行事だった頃の 盆踊りの名残のようです。 ◇お帰りはナスの牛に乗って お盆に作るキュウリやナスの牛馬ですが、ご先祖様のお迎えに活躍したキュ ウリの馬に対して、送りに活躍するのはナスの牛。 お迎えには「一刻も早く」と足の速いキュウリの馬で、お帰りは名残惜しい ので足の遅いナスの牛なのだとか。 ご先祖様を送るナスの牛には、たっぷりと道草を喰わせてのんびり帰ってと 願うのでしょうね。 ◇キュウリの馬、ナスの牛で一財産? 江戸時代の話し。豪商河村瑞賢は始めは貧しい車力だったそうです。 盆明けのある日、品川の海岸を歩いていると、海岸には盆の精霊流しで流さ れてきた沢山のキュウリやナスが流れ着いていました。キュウリの馬やナス の牛のなれの果てでしょうか。 これを目にした瑞賢は、これを拾い集めて塩漬けにし、普請場を回りこれを 普請場の人夫に安く(それはそうです、元手はただですから)売って儲け、 その資産の基礎を気付いたそうです。 ものを無駄にしない という精神は見上げたものですが・・・現代で同じことをすると多分問題に なりそうですね。 おっと、なんだか「盆明け」とは違った話になってしまいました。仕方がな いのでタイトルを「盆明け雑話」と変更しておきますので、ご勘弁を。
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