日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■新しい月に抱かれた古い月 12/1,12/2 と夕方の空を月と金星、木星の三つの明るい天体が飾っていたこ とにお気づきになった方も多いと思います。日刊☆こよみのページにも、こ の様子を見ましたというメールが何通か届いています。 ◇月の暗い側がぼんやり見えている? さて、一昨日、昨日と目を惹く三天体の配置でしたから、その中の一つの天 体であった月をまじまじとご覧になられたという方もいらっしゃるはずです。 まじまじとご覧になって、さてどうでした? 普段は気づきもしなかった何かに気が付いたのでは? あれ、月の暗い側もうっすら見えている そんな風に感じた方はいらっしゃいませんか? 「三日月の絵を描いてください」と言われたら、普通は明るい部分だけを描 いてしまうことと思います。それだけ普段は太陽の光に照らされて光る明る い部分にだけに注意が向いてしまうということです。でも、よくよく見ると 暗い側も真っ暗ではなくぼんやりと光って見えているはずです。月の暗い側 がこんな風にぼんやり光って見える現象を「地球照(ちきゅうしょう)」と 呼びます。 この地球照のことを英語では the old moon in the new moon's arms と言 い表すそうです。直訳すれば「新しい月に抱かれた古い月」と言うほどの意 味になるでしょうか。 ◇地球照は、地球が照らし出した月 さて、月の明るく輝いている部分は太陽に照らされていると言うことは今更 説明するまでも無いことです。では太陽の光の当たらない陰の部分をぼんや り照らしている者の正体は何でしょう? それは、私たちの住むこの地球なのです。 地球から月を眺めると月は新月から始まって、三日月のような細い月となり それが段々と丸くなっていって満月を迎えます。満月を迎えた後はそれまで と反対に段々と細くなってやがて次の新月となります。 新月は見えませんし、三日月のような細い月は大した明るさが無いのですが、 満月ともなれば話は違います。ちょっとした夜の散歩なら十分に出来るほど 満月の夜は明るいものです。 私たちの地球から見た月はこのように「満月」ともなれば結構な照明となっ てくれる天体ですが、この関係は月から地球を見た場合でも同じです。 私たちが満月を見るように、月からは「満地球」が見える場合が当然あるの です。 月から「満地球」が見えるのは、月が「新月」の場合です。 では三日月くらい細い月の場合に月から地球を眺めたとするとどう見えるか と言えば、満地球からほんのちょっとだけ欠けた姿に見えます。月で言えば 十三夜の月位だと思ってください。 この満月と満地球との比較において、地球と月とで違うことがあるとしたら それは両天体の面積と光の反射率です。 どのくらい違うかを月を基準にして考えてみると、地球のそれは 面積 : 月の約16倍 反射率: 月の約 4~ 5倍 面積が16倍で反射率が控えめに言っても 4倍ですから、「照明」としての 「満地球」は満月のおよそ60~70倍も明るいことになります。こんなに明る い地球に照らされているのですから、太陽の光が直接当たらなくとも「ぼん やり」くらいなら光るわけです。 月が三日月くらいの時、その陰の部分を照らす地球は地球で見る十三夜の月 くらいの形をしています。満月には及ばないものの十三夜の月だって「夜の 散歩」が出来るほど明るいですから、満地球に及ばない十三夜の地球だって 相当に明るいはず。これに照らし出されるから三日月頃の月の陰の部分はぼ んやり光って見えるのです。 ◇地球照はどれくらいまで見える? 空の暗さなどから一概には言えませんが、空の暗い場所で注意深く観察する のなら、半月近くまで地球照を見ることが出来ます。 12/1、12/2と日没後の空を見上げると月の地球照部分がはっきりと確認出来 ましたから、まだあと1~2日くらいは楽に見ることが出来ると思います。 へー、知らなかったと言う方はこの機に新しい月に抱かれた古い月をご覧下 さい。よーく見ると、ぼんやり光った月にもきちんと月の模様が確認出来る はずです。 どんな風に見えるのかな? と思う方のために一昨日の12/1に撮した地球照 の写真をWeb こよみのページに掲載しておきます。→ http://koyomi8.com/img/sashie7/chikyuusyou20081201.jpg Web こよみのページの暦と天文の雑学にある以下の記事も興味が有ればお読 み頂ければ幸いです。 『月を照らす地球の光・地球照(ちきゅうしょう)』 http://koyomi8.com/reki_doc/doc_0550.htm
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