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■正午30分過ぎは、何時何分?・補足 昨日(1/23)の号で書いた記事について、HTさんから大変参考になる御意見を 頂きましたので、本日は昨日号の補足をさせて頂きます。 その中でHTさんの説明を引用する必要が有りますが、HTさんのメールは長文 でしたので、大変失礼ながら適宜抜粋と省略をさせて頂きました。紙上での お詫びとなってしまいますが、HTさんにはご理解頂きたいと思います。 なお、今回の話で重要になる改暦の詔書(太政官布告 第三百三十七号)は Web こよみのページの次の URLで見ることが出来ます。 ⇒ http://koyomi8.com/sub/koyomino_houritsu.htm 昨日の記事の最後に書くはずが、うっかり URLの紹介を忘れておりました。 本日の話にも関係しますので、お時間が有ればお読み下さい。 ◇HTさんの説明(一部抜粋・省略) 関連するのは第 3項と別表の「時刻表」です。(時刻表はメルマガにもあり ますので、掲載を省略します。) (原文) 一 時刻ノ儀是迄昼夜長短ニ随ヒ十二時ニ相分チ候処 今後改テ時辰儀時刻昼夜平分二十四時ニ定メ 子刻ヨリ午刻迄ニ十二時ニ分チ午前幾時ト称シ 午刻ヨリ子刻迄ヲ十二時ニ分チ午後幾時ト称候事 (意訳) 第 3項 時刻の件、これまで昼夜を季節による長短に応じて12分割していた ところ、時計の時刻は、昼夜を24等分し、子刻から午刻までを12等分して 「午前×時」と称し、午刻から子刻までを12等分して「午後×時」と称する。 これは、 1日を24等分して毎正時の呼び名を「午前×時」「午後×時」と定 めているわけです。(中略)その上で別表として「時刻表」があるわけです。 それには、子刻は午前零時(=前日の午後12時)、午刻は午前12時とありま すので、第 3項の最後の部分は「午前12時から午後12時の毎正時を『午後× 時』と称する」という意味になります。 つまり、太政官布告第 337号により、午前12時も「午後×時」と称すること ができるわけで、ここから先は明文化されていない以上、法律学でいう「類 推適用」により、明文化されている「午前零時」に準じて「午後零時」と称 すべきと解されます。 いずれにせよ、午前12時30分は、「午前12時から30分間経過した時刻」とい う意味であり、午刻(午前12時)を過ぎている以上、「午後」に属します。 (中略) 簡単にまとめると、 午前12時30分は午後に属する。 午後12時30分は翌日の午前に属する。 ということになります。 (中略) 太政官布告第 337号ができた明治初期は「時」単位がせいぜいであり、一般 の人が「分」「秒」を意識しだしたのは、このころに始まった鉄道が普及し てからだといわれています。しかも、この布告は、それまでの太陽太陰暦か ら太陽暦への切り替え、それまでの不定時法から定時法への切り替えが主目 的ですので、当時はこの程度の規定で事足りたのでしょう (HTさんからの引用、ここまで) ◇午前と午後 昨日の説明では別表の「時刻表」の中身だけを問題にしてしまいました。こ こが最大の失敗でした。あまりに自明のこととして書かなかった第 3項の 子刻ヨリ午刻迄ニ十二時ニ分チ午前幾時ト称シ 午刻ヨリ子刻迄ヲ十二時ニ分チ午後幾時ト称候事 がより重要でした。これだけを見れば、悩まなくとも午前12時を過ぎた時刻 は午後なのだから「午前12時30分という表現は誤り」とあっさり解決でした。 別表の午前と午後の非対称な表現も、暦計算やそのプログラムなどを日常に 行う私からすると 「本来対称であるべき事柄を、わざわざ非対称に表現するからには特別 な意味が有るに違いない」 と思えてしまうのですが、単にあたりまえのことを省略した表現だと考えれ ば考え込む必要もなかったのでした。枯れ尾花を幽霊だと思い込んだのは自 分だけだったようです。 ◇午前12時、午後12時という表現について 昨日と今日の話で混乱の元となるのは「午前12時」といった表現です。 午前12時のような表現は、 「午前」とは午前は 0時から午前12時までをいう のようにある期間の終了を示す場合だけに使う特殊な用法と考え、その後に 継続するものを表現する場合は「午後零時」を使うとすれば、 午前12時30分は昼か夜か といった問題にに悩む必要もなくなり、明確になると思います(私は24時間 制の方がもっと判りやすいと思いますけど)。 こう考えると、デジタル時計の表示に午前と午後をつけるとしたら 12:00AM (or 12:00PM) という表現はいらない気がしますね。12:00 で時が止まるなら別ですが。 あ、目覚まし時計は、「睡眠を終える」時刻を表すと考えると、終了を表す 特殊な用法での12時の意味も有りますかね。一筋縄ではいかないですが、こ の本当に特殊な場合は特殊な場合と捉えて、一般的な使用での誤解を避ける ため、やはり 12:00AM等の表現は極力止めたいですね。 最後にHTさんのメールで、もやもやしていたところが大分すっきりしました。 紙上をお借りしてHTさんには感謝致します。有り難うございました。
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