日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■葭始めて生づ 七十二候の一つ、二十四節気「穀雨」の初候は 葭始めて生づ (あし はじめてしょうづ) です。今年(2009)は4/20がこの候の始めとなっています。 葭は、葦とも蘆とも書く水辺の多年草です。 辞書の説明を借りれば、 【葦・蘆・葭】(あし) イネ科の多年草。各地の水辺に自生。世界で最も分布の広い植物の一。 地中に扁平な長い根茎を走らせ大群落を作る。高さ約 2メートル。 茎に節を具え葉は笹の葉形。秋、多数の細かい帯紫色の小花から成る穂を 出す。茎で簾(すだれ)を作る。よし。 菟玖波集「難波(なにわ)の葦は伊勢の浜荻」 《広辞苑・第五版》 さらに漢和辞典を引くと「葭」という文字の意味は、穂の出ていない葦とか。 春になり、雪解けの水で水量が増え、水をかぶる川岸には、鋭い円錐形の葦 の芽が川岸を覆った水面から顔をのぞかせます。 葦の芽ですから、当然まだ穂は出ていませんので、漢和辞典の説明通りであ れば、「葭」というべきでしょうか。 この水面から顔を出した葦の若芽は、 葦牙(あしかび) とも呼ばれます。その鋭い円錐形の姿を牙と見立てた言葉で春の季語ともな っています。また牙でなく、「角(つの)」と見て、葦角(あしづの)とも 呼ばれます。 冷たい水を葦の牙が切り裂いた後には、新しい季節が訪れるのでしょうか。 ◇「あし」と「よし」 ちなみに、【葦・蘆・葭】は「あし」と読む一方で「よし」とも呼びます。 これは、 あし = 悪し に通じるとして、この悪い連想を忌んで「よし = 善し」と言い換えるよ うになったものだと言われます。 同じ感じで、正反対の意味の読みとは紛らわしい。縁起担ぎの言い換えも よしあし (善し悪し ? 葦葦) といったところでしょうか? 何はともあれ、川岸に葭が生じ成長を始めるころには、川の水も温む季節と なります。
日刊☆こよみのページ スクラップブック