日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■春と夏の境に咲く藤の花 『明治の作家斎藤緑雨が「青皇の春と、赤帝の夏と、 行会の天(ゆきあいのそら)に咲くものなれば、藤は雲の紫なり」 と書いている。』 という一文を、お天気博士として知られる倉嶋厚さんの「季節の366日話 題事典」という本を読んでいて見つけました。 この日刊☆こよみのページにも度々登場する中国古代の五行説によれば、森 羅万象はすべて五行(木・火・土・金・水)の性質の組み合わせで表せるも のとされていました。森羅万象なので、色や季節についてもしかり。 ではどのように表されているかというと、 木(青・春)、火(赤・夏)、土(黄・土用)、 金(白・秋)、水(黒・冬) これを踏まえて緑雨は「青皇の春と、赤帝の夏」と書いたのです。 そしてその春と夏の間、春と夏が行き会う季節に藤は花をつけることから、 藤のあの紫の色は春と夏の色、青と赤が混ざり合った色だと言っています。 ちなみに、藤には「二季草(ふたきぐさ)」という別名も有るとか。 この別名も春と夏、二つの季節の花と言う意味でしょうか。 ◇藤の花の開花時期 私の周りでは今は藤の花盛り。 藤の開花に気がついたのは四月の下旬のことでしたが、日本の他の地域では いつ頃藤の花が咲くのでしょうか。 全国の気象台が毎春、桜の開花時期を発表していることは皆さん、よくご存 じのことでしょう。気象庁ではこうした生物季節の観測を行っており、いく つかの植物については、地域ごとにその開花時期をまとめています。藤もそ うした植物の一つ(藤の場合は、日本各地に普通に見られる「ノダフジ」に ついてまとめられています)。 前出の倉嶋さんの著作には、気象庁の生物資料によるノダフジの開花平均日 も載っていました。それをそのまま使わせて頂くと、 宮崎 4/09、 京都 4/23、 東京 4/23、 長野 5/04 盛岡 5/22、 青森 5/22、 函館 5/30 今年の状況はという情報は、気象庁の開花情報のサイトで確認することが出 来ます。 (気象庁の開花情報 http://www.hanazakura.jp/kaika/index.html ) これをみると、例年に比べて今年は藤の開花はだいぶ早そうです。 ◇身近な植物、藤 古来から、藤の蔓や皮は丈夫な綱としたり、繊維をとりだして荒栲(あらた え、「荒妙」とも書く)と呼ばれる目の粗い織物としたりして使われた有用 な植物。また、その長く垂れ下がった花房の形は実った稲穂を連想させると いうことから豊作を約束するものと考えられた、日本人にとってはなじみの 深い植物です。 この昔からなじみの深い藤は、現在でもノダフジやヤマフジといった種類が 全国各地に自生しています。 ちょっと郊外に出かける機会が有れば、この春と夏の境に咲く昔なじみの藤 の花を探してみてください。
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