日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■輪のある惑星から輪が消える日 「三重の最も遠い惑星を見た」 と1610年にその惑星に望遠鏡を向けたガリレオは書きました。 ガリレオの作った望遠鏡は、今からは考えられないほど性能が悪い(レンズ の作りが悪い)ものでしたから、現在なら誰でも知っているこの惑星の姿を 正しく捉えることが出来ず、 三つの星が直線に並んだ惑星 と見誤ったのでした。 彼はまたこの星を「耳のある惑星」とも表現しています。 その惑星の名前は土星。おなじみの輪のある惑星です。 ◇ガリレオを悩ませた星 ガリレオは既に木星に衛星を発見(木星の4大衛星、通称ガリレオ衛星のこ と)していましたから、どうやら土星にも二つの巨大な衛星があると考えた ようです。 ただ木星の衛星が日々その位置を変える天体であるのに対して、土星のこの 巨大な衛星は位置を変えることなく同じように土星に張り付くように見え続 けました。不思議な惑星でした(だから、「耳のある惑星」と表現したので しょう)。 その形状から、ガリレオを悩ませたこの土星の耳ですが、それから 2年後、 この耳はさらにガリレオを悩ますことになりました。 あんなに特徴的だったその耳が消えてしまったからです。 そしてさらに 1年たつと消えたはずの耳は再び何事もなくその姿を現しまし た。神出鬼没の不思議な土星の耳でした。 結局のところガリレオを悩ませたこの土星の耳の謎は、ガリレオが生きてい る間には解けることはありませんでした。 ◇そして今年もまた・・・ ガリレオを悩ませた土星の耳は今では子供でも「土星の輪」として知ってい ます。 望遠鏡による観望会などを開くと、見たい天体の第一位は土星。 みんな口を揃えて言います。 土星の輪っかが見たい と。 「土星の輪」と一口に言いますが、輪と言っても一つではありません。 現在知られている土星の輪はA環~G環までの 7つあり、さらに探査機などに よって幾つかの「輪」が見つかっていて、全部併せると11(2009年の時点で) になります。 A~G環がどのように並んでいるかというと、内側から順にD環,C環,B環,A環, F環,G環,E環の順となります。ただし、私たちが普通の望遠鏡や写真などで 見知った土星の輪はA,B,C環あるいは、これに D環を加えたものです。 一見すると一枚のように見える土星の輪ですが、実際の輪は沢山の小天体で 構成されています(各々の直径は、数十m 以下の氷のような物質だと考えら れています)。 輪の幅は数万キロもありますが、厚さとしては数百m を越えない(おそらく は100m以下)もので、幅に比べるととても薄いものだと言うことが出来ます。 ともあれ、土星といえば「輪」と言うほど有名な土星の輪ですが、今年はそ の土星の輪っかが消えてしまう年、環の消失する年にあたっています。 なお、輪の消失はおよそ15年に 1度起こる現象です。ガリレオを悩ませた、 土星の耳が見えなくなる現象は、この15年に 1度起こる現象だったのでした。 ◇土星の環の消失 輪の消失といってももちろん輪が跡形も無く消えて無くなるわけではありま せん。単に見えなくなってしまうだけです。 既に一昨年、昨年くらいから土星の輪はどんどん細くなってきていました。 そして今年はついに消失と呼ばれる現象が起こります。 既に説明したとおり土星の輪は大変に薄いものですから、真横から見ると全 く見えなくなってしまいます。地球がこの輪を真横から見る位置にくるのは 今年の 9/4です。 さて、輪を真横から見る位置に地球がくるのは 9/4ならもう少し後にこの話 を書けばよいものを、こんなに早く書かなくともいいのに・・・と思われそ うですが本日書いたのにはそれなりの理由があります。 それは、明後日8/11にも環の消失が起こるからです。 明後日起こる環の消失は、地球からでは無く太陽から見て輪が真横に見える ために起こる現象です。 土星の輪も、惑星や衛星がそうであるように自分で光っているわけでは無く、 太陽の光を反射して光っているわけですから、太陽に対して真横を向く位置 にくると、反射する面が極々わずかになりますから、事実上見えない状態と なります。 そして8/11以降はしばらく地球からは土星の輪の影の部分を眺めることにな ります。影の部分から見る土星の輪は淡く、普通の輪の姿とは違った一風変 わった姿となるのですが、今回は土星が太陽に近い方向に見える時期にこの 状態となるため、この影の側から見た輪を見るチャンスは少ないのが残念で す。 ◇土星は今、どこに見える 土星は日が沈んでから暫くは、西の空の低空に見ることが出来ます。 土星が西の空に沈む時刻は20時30分頃。 日没後、西の空が晴れていたら望遠鏡を土星に向けてみると、輪のないちょ っと情けない姿の土星を見ることが出来るはずです。 ガリレオを悩ませた、耳のない土星をあなたも眺めてみませんか?
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