日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■7月・光の国は朝日とともに 本日7/10は、ウルトラマンの日。 1966(昭和41)年の今日、ウルトラマン前夜祭が放映されたのがウルトラマ ン放映の最初。昭和30年代に生まれた人達(私もその仲間)には懐かしのヒ ーロー、ウルトラマンはこの日に生まれました。 当初の予定ではこの日は「ウルトラQ」の最後の放送日だったはずが、これ が放映中止となったためウルトラマンのお目見えが一週間繰り上げられてこ の日となりました。 ◇ウルトラマンの故郷 人間世界におけるウルトラマンの誕生日となった今日ですが、ウルトラマン は地球にやって来たときには既に 2万歳であったことになっていますので、 本当の誕生日が何時かは不明です。何せ 2万年前のカレンダーが地球にはあ りませんから。よその星で生まれたウルトラマンの誕生日を地球の日付で表 す意味があるのかという問題もありますし。 さて、本当の誕生日は分からないウルトラマンですが生まれ故郷は判ってい ます。 私たちの銀河系から 300万光年離れたところにある M78星雲、別名光の国と よばれる場所がウルトラマンの故郷です。この「エムななじゅうはち星雲」 はウルトラマンの故郷として考え出された「架空の星雲」で、実在する天体 ではありません。 ◇実在する M78星雲 M78星雲は、オリオン座の散光星雲の一つです。 オリオン座の三ツ星の少し北側に見える天体で、小口径の望遠鏡でも見るこ との出来る天体で、近傍にある明るい青色の恒星の光を反射して光る反射星 雲です。地球から M78星雲までの距離は約1600光年です。 「M78 星雲は架空の星雲で実在しない天体」 と言った(書いた)舌の根も乾かないうちに、何を言い出すのだと思われた 方もいらっしゃるかもしれませんが、これも本当のこと。 ここで云うM78 星雲の 「M」は、18~19世紀にかけて生きたフランスの天文 学者シャルル・メシエがまとめた星雲や星団の記録、メシエカタログの頭文 字です。 M78星雲はこのメシエカタログの78番目に記載されていた天体と云 うことになります。 ウルトラマンの出身地、光の国と同じ名前の M78星雲ですが、ウルトラマン の設定にあった銀河系外( 300万光年の彼方)星雲ではなく、本物はオリオ ン・コンプレックスと呼ばれるオリオン座全体に広がる巨大なガスの一部と いうのがその正体でした。 ◇光の国は朝日とともに昇る? ウルトラマンの生まれた光の国と同じ名前を持つ実際の M78星雲をせっかく だからウルトラマンの日である7/10にみようと思う方がいたら(本当にいる かな?)、早起きして日の出直前の東の空をよく探してみてください。 三ツ星が地平線に対してほぼ垂直に上ってくる所を見つけることが出来ると 思います。 ただし、7/10だと本当に日の出直前なので空が明るくなっていて双眼鏡でも 用意しないと三ツ星も見えないかもしれませんが。 M78星雲はこの三ツ星の 中でも一番最後に上ってくる三つ目の星の近くにあるので、 M78星雲が地平 線から姿を現したと思ったらその2~3分後には太陽も昇ってきます。 さすがは光の国、朝の光と同時にその姿を現すんですね・・・。 と感心はしますが、どうやら7/10に M78星雲の姿を見るのは望遠鏡を使って も難しいようです。やはりオリオン座は冬の星座ですね。 「冬まで待てない」という方には、あと一月ほどお待ち頂ければ日の出の 2 時間半ほど前には M78が昇るようになりますので、そのころにチャレンジし てください。 ◇本当の生まれ故郷はM87星雲? ウルトラマンの生まれ故郷は当初の設定では M87星雲だったそうです。 これが脚本印刷の際に M78星雲と間違えて印刷されてしまったため、以後ウ ルトラマンの故郷という栄光の座は M78星雲のものとなってしまいました。 ちなみに光の国になり損なった M87星雲はというと、かみのけ座とおとめ座 の境界付近にある銀河系外星雲(楕円銀河)にその名が付いています。 こちらの地球からの距離は5900万光年。ウルトラマンの故郷、光の国の設定 よりはだいぶ遠い星雲です。 こちらは7/10頃は日が暮れて暗くなった頃に、西南西の空、高度角45°ほど の見やすい位置にあります。光の国になり損なった M87星雲のことを思い出 すことがあれば、望遠鏡を向けてみてください。
日刊☆こよみのページ スクラップブック