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■ミソハギの花
 今日は月遅れの盂蘭盆。
 最近は学校や企業の夏休みなどとの関係で、新暦でも旧暦でもない月遅れの
 盆の日取りが一般化してきているようです。
 私の周りでも、この月遅れの日取りで盆行事があたりまえになっています。

 この時期になると田圃の脇の用水路の土手や、池の畔に赤紫色のミソハギの
 花を見かけるようなります。

 ミソハギは湿気の多い草原や小川の畔を好んで生える多年草で、茎は四角形
 で直立してよく分枝し、背丈は1m程にまで成長します。葉は細く長さは4~5
 cm。花は 1cm程で茎の上部の葉脇に3~5個ほど集まって咲きます。
 ちょうど盂蘭盆の頃に咲く花で、また日本全国に広く見られる花でもあるの
 で、この花を盆花として仏前に供えたお宅も多いことと思います。

◇ミソハギは神聖な花
 ミソハギの名は、

  溝萩、禊萩、鼠尾草、千屈菜

 といった漢字を当てられます。また、

  水萩(みずはぎ)、水懸草(みずかけぐさ)、精霊花(しょうりょうばな)

 といった異名で呼ばれることもあります。
 鼠尾草は、ミソハギの全体の姿が鼠の尻尾に似ているからでしょうか。千屈
 菜は漢方薬として使われる場合の名前です。
 溝萩は、この花が用水路など、「溝」に咲くのを見かけるためでしょう。水
 萩も水辺に育つことからついた名前と思われます。

 こうした名前に対して、禊萩、水懸草、精霊花はこの花のちょっと変わった
 使い方に由来した葉のようです。
 精霊花はその文字から想像出来るように、盆の精霊棚(盆棚)に供えられる
 花という意味。

 残りの二つ、禊萩と水懸草はこの花が神事・祭事に際して行われる禊に使わ
 れたことを表しています。神聖な行事を行う場合、それに先だって水辺で禊
 を行いましたが、その禊の際に身体を撫でるのに使われたのがこの草だった
 そうです。水懸草は禊で水を懸けたことから、禊萩はまさに、禊に用いる萩
 という意味ですね。

 もちろん水辺で容易に手に入る草だったということから、禊に用いられるよ
 うになり、禊に用いられるようになったことから、神聖な花(草)という地
 位を得たのでしょう。そしていまは神聖な花として精霊花、盆花として好ん
 で使われるようになったというわけです。

 田圃の端に、夏の陽射しを浴びて元気に育つミソハギは、「神聖な花」とは
 云っても近寄りがたい高貴な花という感じは微塵も有りません。
 年に一度帰ってくるご先祖様に、懐かしい故郷の夏を思い出してもらうには、
 この身近な花が一番かも知れませんね。

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