日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■「望遠鏡の日」雑話 今日、10/2は「望遠鏡の日」とされています。 この日は、オランダのミッデルブルグという町(アムステルダムとロッテル ダムの間にあります)の眼鏡屋さん、リッペルハイがオランダの国会に特許 を申請した日だからです。 この日、リッペルハイは有力な王族であったマウリッツ(オラニエ公 1567- 1625)にもこの望遠鏡を贈っています。リッペルハイはこの発明によって国 からの年金ももらおうと考えていたらしいので、有力な王族にその後押しを 願ってのことだったのでしょうか。 ◇望遠鏡発明者はだれ? 現在ではリッペルハイが望遠鏡の発明者とされていますが、実のところこの あたりははっきりしていません。 リッペルハイの住んでいた町、ミッデルブルグの町には、ヤンセンという人 が営む眼鏡屋さんがあったのですが、この眼鏡屋さんでも、リッペルハイが 特許を申請した年より前(1604年頃)から望遠鏡を販売していたとも言われ ていますし、リッペルハイが特許を申請した直後にメチウスというレンズ研 磨工がやはり望遠鏡の特許を申請していたりして、誰が一番最初に発明した のか、はっきりしません(この三人以外の誰かかもしれません)。 ◇誰が発明者か分からない理由 誰が望遠鏡の発明者かはっきりしない理由は、望遠鏡の構造がきわめて簡単 だからです。レンズ二枚があれば、簡単な望遠鏡は作ることが出来ます。 十三世紀末には視力が衰えた人のために眼鏡が作られていたらしいことが分 かっています。先に名の挙げたリッペルハイにしてもヤンセンにしても眼鏡 屋を営んでいた訳ですから、商売が成り立つほど眼鏡は普及していたという ことが出来ます。 それだけ眼鏡が出回っていれば、眼鏡用レンズも随分な数があったわけで、 そのレンズ二枚の組み合わせ次第で望遠鏡が出来てしまうことを考えると、 偶然に二枚のレンズを並べてみたら 遠くのものが大きく見えた!! という偶発的な発明がそこかしこで起こっても不思議ではありません。 私は昔から「最初にナマコを食べた人は誰だろう。勇気があるな」と思って いますが、おそらく各地で幾人もの「勇気のある人」がいて、誰が最初かな んて分からないのと同じで、あまりにありふれた偶然で発明されてしまう可 能性の高い望遠鏡の最初の発明者を特定することは困難なのです(特定して みても、意味がないとも云えますけど)。 ◇特許申請の結末 自信満々で特許申請を行ったリッペルハイでしたが、その申請に対する審査 の結果は、 申請却下 でした。その理由は 「あまりに簡単な構造で、誰でも作ることが出来る。 しかも、多くの人が既にこの発明を知っている。」 というものだったそうです。 もちろん、リッペルハイの直後に特許申請を行ったメチウスの申請も却下さ れています。 あわよくば望遠鏡の独占販売と年金でお金持ちにというリッペルハイの夢は 叶わぬ夢のままに終わりました。 でもいいじゃありませんか。 お金持ちにはなれなかったかもしれませんが、望遠鏡の発明者はだれかとい うと、 オランダのリッペルハイです(多分ね) と、その名前を歴史に刻むことは出来たのですから。
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