日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■鞴祭(ふいごまつり) 十一月八日はたたら師、鋳物師、鍛冶師など金属を扱う職人さん達のお祭り の日、鞴祭が行われます。 日付については、旧暦の十一月八日に行うところと新暦の十一月八日に行わ れるところがありますが、本日は旧暦の十一月八日ということで、この記事 を書いております。旧暦の日付の方だけで書いて、新暦の日付では書かなか ったには特別な理由はありません。ただ私が、新暦の十一月八日には「見逃 してしまった」からです・・・。 ◇鞴(ふいご)って? 鞴は、炭などの燃料を高温で燃焼させるために空気を送り込むための道具で す。主に金属を加工するために1000℃を越すような高温を作り出すために使 われた送風装置です。今では見る機会はほとんど無くなってしまった道具で しょう。 かくいう私も、実物は随分昔、両手で開け閉めするタイプの小型の鞴を見た ことがあるだけ。そのときには、何のために使う道具かわからずに、「空気 入れ?」なんて思っていました。 たまに、刀鍛冶が刀を鍛えている様子を映したTVの映像などに、箱鞴など が登場することもありますが、実物はなかなか見る機会がありません。 全然イメージが湧かないという方は、ご面倒でも「鞴」「ふいご」などのキ ーワードで、インターネット検索を行って下さい。いろいろな鞴の画像が現 れると思いますので。 百聞は一見にしかず。見れば私のわかりにくい文章の説明より百倍(万倍?) も理解の助けになるでしょうから。 ◇鞴祭と神様 鞴祭は、吹革祭、鍛冶祭、蹈鞴(たたら)祭とも呼ばれます。 この日は、金属を扱う職人さん達は仕事を休んで、仕事道具である鞴を清め て、注連縄を張り、御神酒や蜜柑、スルメや赤飯などを供えて祀ります。 鞴祭に祀られる神様は鍛冶の守護神である金山彦命(かなやまびこのみこと)、 迦具土神(かぐつちのかみ)、稲荷大神です。 砂鉄から鉄を作る蹈鞴師たちは特に金山彦命を「金山様」と呼んで、普段か ら信仰しており、鞴祭のことも「金山講」と呼んだそうです。 鞴祭では、お供えの蜜柑をまきます。この蜜柑を食べると風邪をひかないの だとか。しょっちゅう風邪をひく私としては、是非この蜜柑、欲しいもので すね。 ちなみに、鞴祭りと蜜柑の関係は、十一月八日の卯の刻に蹈鞴が天から降っ てきて蜜柑の木に引っかかっていたという伝承からだとか。 鞴など、目にすることもなくなった昨今ですから鞴祭など、消え去った祭り かと思いましたが、今でも金属や火を扱う職人さん達の間ではこの祭りは続 いているそうで、この日にはボイラーの前に祭壇を築いて御神酒を供えるな どしていると、こよみのページの読者の方からメールをいただいたことがあ ります。 私たちは知らないけれど、そうした「関係者かぎり」の伝統行事って、いろ いろ残っているのかも知れませんね。
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