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■珍しい閏九月
 朝の気温が、10℃を割り込み一桁となるようになり、そろそろ冬かなと思う
 程になりましたが、そんな寒い朝を迎えた本日は、旧暦では九月の一日。
 旧暦では、九月は晩秋の月。この通りであれば、あと一月は「秋」がつづく
 ことになります。大分寒いですけれど。

◇二度目の九月
 今日は旧暦では九月一日と書きましたが、この九月一日は今年二度目の九月
 一日です。今年は旧暦の九月が二度あります。

  1.新暦  9/24~10/23 の間(大の月)
  2.新暦 10/24~11/21 の間(小の月)

 1が普通の旧暦の九月、そして2が二度目の九月で「閏九月」です。
 今年は九月が二度あるため、一年は十二ヶ月ではなく十三ヶ月。一年の日数
 も 384日と長い一年となっています。

◇旧暦の「閏月」
 新暦の場合、閏年というと二月が29日まであるほぼ 4年に一度巡ってくる年
 のことです。新暦の閏年の日数は 366日。閏年以外の平年の日数は 365日で
 すからその差は1日です。この1日のことを「閏日」といいます。

 旧暦の年にも閏年と平年との違いがありますが、旧暦の場合閏年と平年との
 日数の差は1日ではなく1ヶ月。この1ヶ月を「閏月」といいます。

 平年の日数は353~355日、閏年の日数は383~385日となります。
 1ヶ月も1年の長さが違うと大変でしょうけれど、旧暦の閏年は、ほぼ3年
 に一度、つまり平年2年につき閏年1年が巡ってくるわけですから、これく
 らい頻繁なら、人間はなれちゃうのかも知れませんね。

 現在「旧暦」と呼ばれる暦は、明治5年まで使われた天保暦がその基本とな
 っています。旧暦の暦月の名前はその暦月に含まれる二十四節気の中気によ
 って定められます。

 二十四節気の中気の間隔は平均すると 30.44日です。これに対して暦月を区
 切る朔(新月)と朔の間隔の平均は 29.53日。これを見ると分かるとおり、
 中気と中気の間隔は、暦月の長さより少しばかり長い。このため、時々(3
 年に1度くらい)、中気と中気の間にはまり込むような形の暦月が生まれま
 す。

 こうした暦月には、暦月の名前をつけるもとになる二十四節気の中気が含ま
 れませんから、この暦月は「名無しの月」ということになってしまいます。
 こうした場合は、その直前の月の名前を踏襲します。

 今回の場合は、直前の月が九月でしたから、今日からは二度目の九月となる
 わけです。ただ、それでは紛らわしくて叶わないので、二度目の月にはその
 頭に「閏」をつけて、

  閏九月

 と呼ぶことになります。
 今回は、九月中気である霜降(10/23)と十月中気の小雪(11/22)の間には
 まり込んだ10/24~11/21の間の閏月でした。

◇閏月は夏場が多い?
 旧暦のもととなった天保暦は、二十四節気の日付を太陽の黄道上の位置(角
 度)によって定める「定期法」という計算方式をとっています。この方式を
 用いると、一つ困ったことがおきます。それは、二十四節気の長さが季節に
 よって変化してしまうのです。

 閏月と関係する中気と中気の間隔でいうと、冬の時期の冬至~大寒と夏の時
 期の夏至~大暑の間を比較すると

  冬至~大寒 : 約 29.5日
  夏至~大暑 : 約 31.5日

 のようになっており、夏の方が中気と中気の間隔が広くなります。
 このため、二十四節気の計算に定期が用いられるようになった天保暦からは
 「閏月が夏場に偏る」という問題が生まれてしまいました。
 (この閏月の季節による偏りは天保暦の大きな欠点です)

◇珍しい閏九月?
 さて、今回の閏月はというと、時期的にはほぼ冬の入り口付近。閏月が生ま
 れる時期としては、あまり条件がよくありません。
 珍しいかも知れないなと確認してみたところ、天保暦が使われるようになっ
 た1844年から今までには一度も現れたことのない閏九月でした。

 今日からは、このとっても珍しい旧暦閏九月の始まりの日。
 何かいいことがありますかね(あるわけないか?)。

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