日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■江戸の餅つき 餅はハレの食べ物。 これから迎える正月には鏡餅に、雑煮にとなくてはならない食べ物です。 正月には欠かせない餅ですから、新年が迫ってくると、あちこちで餅つきが 行われるようになります。 昨今は、餅は食品メーカーが大量に作ったものを、お店で買ってくるという のが一般的。手間がかからなくて便利と云えば便利ですが、なんだか寂しい ものです。 こういう時代になる前はどんな風に、正月の餅を用意したのだろうと云うこ とで、本日は江戸の街の餅つきの様子を調べてみました。 ◇江戸の街の餅つき風景 正月が近づくと餅を準備するのは江戸の昔も今と変わりません。 江戸時代の餅の入手法はというと、 1.お抱えの職人をつかって自宅の庭で餅つきをする。 2.菓子屋に頼んで、自家分での餅をついてもらう「賃餅(ちんもち)」。 3.町内の鳶(とび)が、4~5人の人足を引き連れ、釜、臼、杵、蒸籠(せ いろ)、薪を持参して行う、餅つきの出張サービスのような「引きずり 餅」(餅米はこれを依頼する家が用意する)。 4.年の市などで購入する。 の 4種類だったようです。 1のように、お抱えの職人にというのは、上級武士や富裕な商家が行うもの で、これが出来たのはごく一部。ということは、残りは2~4の3とおりと なります。 2と4は、なんとなくクリスマスケーキの予約注文(2)と当日の店頭販売 (4)のような感じです。クリスマスが近づくと人気のケーキ屋さんは数日 前までに予約を入れないと予約も受けてもらえないことがありますが、2の 賃餅も同様で、師走の中頃までに注文しないと、受けてもらえないものだっ たそうです。 4の年の市等での購入は、庶民レベルではもっとも一般的な餅の入手方法だ ったと思われます。先のクリスマスケーキの喩えで云えば、当日の店頭販売 に近いものです。クリスマスを過ぎて、売れ残ったクリスマスケーキが安売 りされるのと同じく、餅の方も正月直前になると、安売りたたき売りが行わ れたようです。 説明最後に残ったのは、3の引きずり餅。 威勢のいい、鳶の兄さんと人足が道具持参で自宅の前で餅を搗いてくれるの ですから,活気があって景気づけにいいと、結構な需要があったそうです。 今だって、こんな出張サービスがあったら、やはりそこそこの需要はある気 がします。もしかしたら、本当にあるかも知れませんね。 現在と違って餅は機械で大量生産というわけにはいきません。みんな臼と杵 とで搗くわけですから、年の瀬も押し迫ると、賃餅を受けた菓子屋や、ひき ずり餅を行う鳶の兄さん方は大忙し。朝は、暗いうちから灯火を用意して餅 を搗き始め、夜遅くまで搗き続けたとのことです。 ということは、師走も半ばを過ぎたあたりから、大晦日の明け方頃まで、江 戸の街には、一日中、餅つきの音が響いていたのでしょう。 現在は餅も、機械による大量生産が可能ですから、一日中、臼で餅を搗く音 が聞こえるということはありません。この点は、江戸の街の餅つき事情が羨 ましいかな?
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