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■2033年問題について・・・その1 8/28(金)に日本カレンダー暦文化振興協会(一般社団法人)の定時総会・ 講演会に出かけてきました。今回は平日に開かれた会だったので半日、仕事 をさぼって(もとい、「きちんと半日の休暇をとって」)の出席でした。 その会の中で「2033年旧暦閏月問題見解発表」が為されるということで、興 味をひかれたのでした。 (日本カレンダー文化振興協会 http://www.rekibunkyo.or.jp/ ) ◇そもそも「旧暦の2033年問題」とは? 旧暦の2033年問題とは、簡単にいうと、現在、ちまたに流布しているいわゆ る旧暦の日付の決定方式では、2033~2034年の旧暦の日付が決まらない(決 まるけど、どう考えても矛盾した日付が生まれる)という問題です。 旧暦に興味のある者、それも自分で旧暦の暦を組み立ててみようなんていう 変わり者(私の同類ともいう)の間では随分昔から話題になっていた問題で した。私自身20年くらい前には 「2033年にもなったら、もう旧暦なんて使ってないだろうから、 どうでもいいかもね」 なんて、冗談交じりに会話していたと思います(旧暦が使われなくなると云 う予想は、どうやら外れてしまいそうですね・・・)。 このように、一部の変わり者の間だけで話題になっていた旧暦の2033年問題 でしたが、そろそろ、現実問題として気にする人達が出てきたようです。 その一番は、大安やら仏滅という六曜が掲載されたカレンダーを作るカレン ダー業界の方々。ついで、二十七宿方式で占いをたてる方々・・・かな? そうした事柄に関わる業界の方が大勢参加なさっている日本カレンダー暦文 化振興協会(短縮して「暦文協」)でも、そろそろこの問題が気になってき たようで、今回の見解発表となったようです。 ◇2033年の旧暦の月次 中国生まれの太陰太陽暦をそのルーツに持つ、旧暦は単純に一月~十二月ま での十二ヶ月が並ぶ暦ではなく、3年に1度くらいの割合で、一年が十三ヶ月 となる年が出来ます。このとき一つ余分に暦にあらわれる月を閏月といいま す。 閏月をどのように入れるか、その方法を定めたものを置閏法といいます。 きちんとした置閏法など無かった原始的な太陰太陽暦では、社会的に力を持 つ者達が経験的に入れていましたが、これだと、いい加減な入れ方(当人達 は真面目におこなったのかもしれませんが)となることも多く、暦が整備さ れるに随って、きちんとした挿入の手順が整えられ、これが置閏法としてま とまって行きました。 中国では、太陽の動き(季節の動きといってもよいかも)を示す二十四節気 を発明し、これを使ったなかなか合理的な置閏法で暦を作るようになりまし た。その合理的な方式の基本原理は、 「暦の暦月の名前は、その暦月の中に含まれる二十四節気の中気によって 定める。暦月の中に中気が含まれない場合は、この月を閏月として、直 前の暦月名に閏をつけて呼ぶ。」 というものです。 では、この基本原理に従って2033~2034年の旧暦月名を並べてみるとどうな るかというと、 一月、二月、三月、四月、五月、六月、七月、閏七月、八月、九月、 十月または十一月、閏十一月、十二月または一月、閏一月、二月・・・ という具合です。閏七月、閏十一月、閏一月と沢山閏月が出現します。それ だけでもおかしいのですが、それ以上に 十月または十一月 十二月または一月 とどっちともいえない月まで出現してしまう。 後者の「または」と二つの月名が出来てしまうのは、一つの暦月の中に、暦 月の名前を決定する二十四節気の中気が二つ含まれてしまうためです。 中気を含まない閏月が三ヶ月もあらわれるのはこの「二つの中気を含む月」 があらわれてしまった、しわ寄せともいえます。 中国方式の太陰太陽暦には、こうした問題がずっとあったのかというと、さ にあらず。日本では、最後の太陰太陽暦となった1844年から29年間だけ使わ れた天保暦だけにしか起こりません(中国の最後の太陰太陽暦である時憲暦 にも起こります)。 天保暦ではこうなった場合にどうするかということで、従来からの単純な規 則に、さらに二つの規則を追加しました。 ・春分・夏至・秋分・冬至が入る月は、二・五・八・十一月とし、その 他の月名を調整する。 ・上記の場合、中気を含まない月がすべて閏月とならなくともよい。 私にいわせれば「反則技を公認しちゃった」みたいな規則をねじこんでいま す。でもこの反則技的な規則も追加して、もう一度2033~2034年の旧暦月を 修正するとどうなるかというと 一月、二月、三月、四月、五月、六月、七月、閏七月、八月、九月、 十一月、閏十一月(または十二月)、十二月(または一月)、 一月(又は閏一月)、二月・・・ ()は天保暦の置閏法「AでもBでも可」という曖昧なところが有るので、そ れを考慮すると、こういう風になる可能性もあることを示しています。あま りすっきりしませんが、なんとか無理矢理天保暦の置閏法を当てはめるとこ んな具合になります。しかし・・・ よく見て行くと、閏月の数云々以上におかしな点があります。 気づきましたか? ・・・、八月、九月、十一月、・・・ 「春分・夏至・秋分・冬至が入る月は、二・五・八・十一月」という天保暦 のはっきりした規則を守ると、十月が入る場所がなくなってしまうのです。 反則技まで認めてしまった天保暦の置閏法を以てしても、解決出来ない。 困りましたね。 ◇暦文協の見解発表 規則に従って解決出来ないので、この例外的な年の旧暦月を決定するために は、規則を変えるか、規則のどこかを無視するかしないといけません。 こうなると、作る人毎に違った旧暦が出来上がってしまう。すると、 A社のカレンダーでは大安の日が、 B社のカレンダーでは仏滅になっている。 どうなってるんだ! なんてことになり、カレンダー屋さんには、質問やクレームの電話がじゃん じゃん掛かってくるなんてことになりそうです。 そうならないように、みんなで、例外の年の旧暦を一致させましょうという ことで、暦文協の「見解発表」となったわけです。 では、暦文協の見解による2033~2034年の旧暦の月次はというと 一月、二月、三月、四月、五月、六月、七月、八月(※)、九月、十月、 十一月、閏十一月、十二月、一月、二月・・・ となります(暦文協の資料では、「閏十一月案」となっているもの)。 八月の後ろに(※)をつけたのは、この八月は、本来なら閏七月となるべき 月で天保暦の「秋分を含む月は八月」という規則から逸脱した月であること を明示するために私がつけました。 暦文協が発表した見解の概要は、同協会のサイトに掲示されていますので、 興味のある方はご覧下さい。 ・見解概要(PDFファイル) http://goo.gl/dxjRMQ ◇こよみのページは? ちなみに、こよみのページではどうしているかというと、これが暦文協と結 果は同じです。この問題をどう考えているかは、Web こよみのページの、暦 と天文の雑学の一つとして、まとめた記事がありますので、そちらをご覧下 さい。 ・旧暦の2033年問題 http://koyomi8.com/reki_doc/doc_0195.htm 作暦の常識的に考えると、この辺に落ち着くのでしょうね。 ◇「その2」に向けて 2033~2034年の旧暦の月次の問題については、「まあ、こんなものだろう」 という結論でしたが、今回の見解発表を聴きながら、改めてこの問題を考え いろいろと思うところもあったので、そのうち「その2」も書いてみたいな と思っています。 いつものことながら、いつ書くか、予定は決まっておりませんが。
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