日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■「海の日」は何処へ? ◇海の日 現在の「国民の祝日に関する法律」(通称、祝日法)によれば 海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う。 というのが海の日の意義。まあ、もっともな話です(法律ですから、あたり まえですが)。 「海の日」の意義については、法律制定の当初から変わっていませんが、そ の日付は変わってしまいました。そしてこれからも変わりそう。 「海の日」の日付けは祝日の仲間入りしたした1996年から2002までは7/20に 固定されていました。元々、この7/20という日は「海の記念日」という記念 日でした。「海の記念日」」とは 明治9年に明治天皇が東北地方巡幸の帰途、灯台視察船「明治丸」に乗っ て、横浜港に帰還した日を記念して、1941年に当時の村田省蔵逓信大臣が 提唱して「海の記念日」とした。 というものです。7/20という日付けを採用した理由には、やや薄弱な感、無 理矢理感がないでもありませんが、まあ、無いよりはましと言うくらいには 意味のある日付でした。この「海の記念日」が祝日の「海の日」となったわ けです。 さて、こうして生まれた「海の日」でしたが、この祝日に俗に言うハッピー マンディー法と呼ばれる災いが降りかかってきて、移動祝日となってしまっ たのが2003年。これ以来現在まで「海の日」は7月の第3月曜日となってしま いました。 ハッピーマンデー法は、月曜日に祝日を移動させることで連休を作り出し、 国民の消費活動を活性化させようという狙いがあります。要するに、連休な ので、皆で遊びに繰り出しましょうと言うことでしょう。 ああ、そんな「目先の利益」に釣られてた人達によって、本来祝うべき日と は縁もゆかりも無い日付に移動させられた祝日達が哀れです。 (成人の日・海の日・敬老の日・体育の日の皆さん、辛いですね) ◇二度目の受難 一度目の受難、ハッピーマンディー法を耐えた海の日を再び新たな災害が襲 いました。その災害は思いもよらないもの。「平和の祭典」でした。 つい最近のこと、法案が衆参両院を通過してしまった 『平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会 特別措置法及び平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法の 一部を改正する法律』 という、長い名前の法律によって、2020年の東京オリンピックの年に限って 「海の日」「山の日」「体育の日」の3つが移動することになってしまいま した。この3日の祝日は2020年に限っては次のように日付が変更されます。 ・海の日 七月の第三月曜日 → 七月二十三日 ・山の日 八月十一日 → 八月十日 ・体育の日 十月の第二月曜日 → 七月二十四日 ご覧の通り、ついていない「海の日」は移動させられる3祝日の1つにしっか り入ってしまっています。 何でも、東京オリンピックの開会式、閉会式に伴う交通ラッシュを緩和する 目的で休みを設けたいためだとか。 果たして本当に交通ラッシュの緩和に役に立つのかという疑念と、そんな東 京周辺にしか関係ない問題のために、日本全国に関係する祝日を変える必要 があるのかというもっともな意見をよそに、ろくに審議されず(衆議院付託 委員会では、「審査省略」。本当に審議されなかった)、法案は通過してし まいました。 ああ、なんか軽く見られていますね、「海の日」。 ◇三度目は? こんな可愛そうな「海の日」には、もう一山、いや海だからもう一波? あ りそうです。どうやら、2020年にオリンピックのために「海の日」を移動す るにあたっては、祝日の日付を無闇に変更することに反対する議員も多くて こうした反対那派を説得するために、 2020年に日付を変更する代わりに、翌2021年からは、 「海の日」をもとの7/20の日付固定に戻す という条件がつけられていたらしいとのことで、もとの日付に戻す法案が国 会に提出されるらしいとの話が持ち上がってきていました。 ところが、いざ法案を提出しようとしたら今度は観光業界を中心に、折角定 着したハッピーマンディー法による 3連休が無くなることに反対する主張が 現れて法案提出は難航しているようです(今国会提出は見送りとか)。 一度、雲をつかむような不確かな「経済効果」なんていう目先の理由のため に、祝日本来の意味をねじ曲げるようなことをした結果が産んだ混乱でしょ うかね? 「海の日」そのものには何の罪もありませんが、その外側でのごたごたはこ れからも続きそう。 折角の「海の日」なのに、本日は「海の日」の受難の物語になってしまいま した。ああ、可愛そうな「海の日」。
日刊☆こよみのページ スクラップブック