日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)

■月と太陽の明るさ
  お月様とお日様、どっちがありがたい?
  お月様。だってお月様は暗い夜を照らしてくれるもの。

 昔何処かで聞いた、あるいは読んだ物語にこんな一節がありました。
 月はそれ自体では光ることが出来ず、太陽の光を反射して輝いているのだか
 ら、そもそも太陽がなければ、暗い夜を照らすことも出来ないんだよ・・・
 といった、今では誰でも知っている常識が常識ではなかった時代には世界の
 あちこちでこんな素朴な物語が生まれたことでしょう。

 「そもそも」と言えば、昼が明るいのは太陽が輝いていてくれる御蔭なので
 その点で、太陽はもっと評価されてもよさそうなものですが、こうした物語
 においては、昼が明るいことと太陽とは無関係と考えられてしまうようです
 ね。一所懸命、昼を明るくしてくれているのに、ちっとも評価されない太陽
 が不憫です。

 人間の世の中でも、本当に役立っている人の力って見過ごされてしまってい
 るんだろうな。寓話が教えてくれる真理?

◇夜を照らしてくれる月の実力
 あまり評価してもらえない太陽と違って、ありがたがってもらえる夜のお月
 様の明るさって、どんなものか、考えて見ましょう。

 奇しくも、今月(2019/8)は15日が満月。ついでにこの日は旧暦の15日(旧暦
 では7月)ということで、十五夜の月。丁度月遅れのお盆の日付と旧暦の日
 付もあってこの辺りには、各地で盆踊りが行われるのではないでしょうか。

 旧暦時代であれば盆の時期、暦月の7月の13~15日頃は十五夜の月前後です
 から、盆踊りの夜はいつも明るい月が照らす夜でした(晴れていれば)。
 今年は日のめぐりから、丁度「昔ながらの盆踊りの夜」が出現することにな
 ります。有り難い月の明るさを考えるには丁度よいタイミングですね(と多
 少強引なこじつけ)。

 早速ですが、「星」としての月の明るさについて考えて見ます。
 月は満ち欠けをする天体なので、満月の時と半月や新月では明るさが全然違
 うものになってしまいます。ただ「明るい月」と言えば、きっとほとんどの
 方が

  まん丸い満月

 を思い浮かべるでしょう。私もそう。
 ということで、代表として満月の明るさを考えることにします。
 天文学では星の明るさを「等級」という数値で示します。
 等級は、星座を形作る星の中でも特に明るい星々の明るさを1等級とし、街
 の明かりや月明かりなどが無い夜に肉眼でやっと見える、最も暗い星々を6
 等級としています(本当に暗い所ではもっと見えますけど・・・個人的な体
 験ではですが)。

 これでは漠然としてしまって判りませんが、1等級と6等級の星では5等級の
 差は明るさでは100倍の開きとなります(1等級の差で約2.512倍)。
 この等級で満月の平均的な明るさを表すと、その明るさは

  -12.7等級

 となります。1等星より更に13.7等の差。とっても明るい。
 計算すると、1等星の約302000倍(30万2千倍)!
 さすが、満月。すごいじゃありませんか。

◇お月様と太陽を比べると
 大変明るいことが判った満月の明るさですが、太陽と比べたらどうでしょう
 か。先ほど登場した等級で太陽を表すと、

  -26.7等級

 おお!!!
 満月も凄いが、太陽は更に凄い。満月の-12.7等との等級差は実に14等。1等
 星と満月の差以上に満月と太陽の明るさの差は大きい。この等級差を明るさ
 の倍数で示すと、約398000倍(39万8千倍)!!
 うーん、明るい満月の明るさも太陽と比べると、霞んじゃいますね。

◇もし、満月で空を埋め尽くしたらどれくらい明るい?
 わざわざ数字で比べるまでもなく、満月でも太陽に比べたら暗いことは判っ
 ていますが、数字よりイメージしやすい比較をして見ましょう。

  もし、満月で空を隙間無く埋め尽くしたらどれくらい明るくなるか?

 ということで、計算してみました。満月の見かけの直径(平均)は角度で表
 すと0.518°。これは、全天球の面積の約1/196000ですから、全天には満月
 を196000個貼り付けることが出来ることになります。これだけ集めれば随分
 明るいぞ!

 となるかというと、残念ながらこれだけしても太陽の明るさの 1/2倍にしか
 なりません。それにこれは全天で考えたのですが、地平線の下の半球は見え
 ないとすると、目に見える半球全部に満月の明るさのものを敷き詰めると考
 えるとその明るさは、太陽のわずか 1/4になってしまいます。

 う~ん、夜を照らしてくれる月は確かに有り難い存在ですが、目立たないな
 がらいつも地球を照らして「昼」を作り出してくれる太陽の有り難さは比べ
 ものになりませんね。

 お月様の明るさに感謝しつつも、目立たない太陽の明るさにも手を合わせて
 感謝しようじゃありませんか。

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