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■1月に2度の満月 来月(2020年10月)はお月見の月ですが、同時に1暦月中に2度の満月のある 月です。これに関してご質問メールをいただきましたのでこれに答えてみた いと思います。 まずは質問メールから ----------------- 鈴木さんからのメール(抜粋)---------------------- > さて、質問なのですが > 来月10月は、満月が2回あります。 > 最近では、ひと月に満月が2回あることを「ブルームーン」というようです > が、この意味は「めったにない」というらしいです。 > > ひと月に満月が2回あるのは、何年かに1回起こるので、それほど「めった > にない」わけではない、とおもっておりました。 > しかし、それは新暦での話で、旧暦では暦の作り方から考えれば「ありえ > ない」ように思われますが、もしかして何かの特例で「たまに」ならあっ > たのかもしれない・・・と疑問に思うようになりました。 > > 旧暦でひと月に満月が2回ある時があり得るかどうか教えてくださいませ。 -------------------------------------------------------------------- (鈴木、佐藤、田中・・・というメジャーな名字は本名でも事実上匿名と同じ なので、匿名とはしませんでした。ご了承ください。) ご質問の中に「ブルームーン」(Blue Moon)という言葉も登場しますが、辞 書で調べると、この言葉を使った熟語に once in a blue moon というものがあります。 この意味は「めったにない、極まれに」となり、blue moon のみでも、同 様な意味を持つようになっているようです。 ブルームーンについての話も触れたいところではあるのですが、そこまで 書くと、かなり長くなりそうなのでまずは「1月に2度目の満月がある」と いう話からスタートし、簡単に説明が終わるようであれば、ブルームーン についても説明することにします。長引けば後日に持ち越し(多分後者だ ろうな?) ◇新暦の1暦月に2度の満月があるとき まず、基本となるデータとして、1901~2100年までの200年間の満月の日を 計算して、1暦月に2度の満月がある暦月を調べてみました。 結果は、200年間に84回。 ※注意 「満月の日」は日本標準によって表した日付としました。 およそ2.4年、29ヶ月に1回程度ですから、滅多にないというほどではありま せんが、比較的珍しいこととは言えると思います。200年分を書くのは大変 なので、2010~2030年の間の結果を書き出してみます。 2010 1/1, 1/30 2010 3/1, 3/30 2012 8/2, 8/31 2015 7/2, 7/31 2018 1/2, 1/31 2018 3/2, 3/31 2020 10/2,10/31 2023 8/2, 8/31 2026 5/2, 5/31 2029 1/1, 1/30 2029 3/1, 3/30 ご覧の通りで、今年の10月は、2日と31日の2度満月となる日があります。 また、2010,2018,2029のように、1月に2度の満月の日がある月が2度もある 年もあります。 月の満ち欠けの周期(朔望周期)は平均するとおよそ29.5日ですので、最 初の満月の日の日付が1日か2日の時にはその暦月には2度目の満月の日が 巡ってくる可能性があります。そのパターンは 1日&「大の月」 ・・・ 必ず2度目の満月がある 1日&「小の月」 ・・・ およそ50%の確率で2度目の満月がある 2日&「大の月」 ・・・ およそ50%の確率で2度目の満月がある ということが出来ます。但し2月は絶対に2度目の満月が発生しない暦月(日 数が28日か29日までしかないから)なので、これは除外しての話です。 既に書いたとおり、こうした1暦月に2度の満月があると云うことは2.4年、 あるいは29ヶ月に1度程度発生すること。これを 「滅多にないこと」 ととらえるか否かは、人それぞれ。 読者の皆さんそれぞれの判断にお任せいたします。 ◇旧暦の1暦月に2度の満月があるとき > 旧暦でひと月に満月が2回ある時があり得るかどうか教えてくださいませ ご質問の後半に、旧暦を作る際、特別な事情で1月に満月が2度あるような暦 月が生まれることはあるかとありましたので、この点について答えます。 ここでの「旧暦」を明治改暦以前(そして現在も?)に日本で使用されてい た太陰太陽暦をさすものだと考えると答えは簡単、 「絶対にありません」 となります。 人為的な操作によって暦月の大小を入れ替えたり、暦月名を変更するといっ たことが行われたことは、結構ありますが、暦月のほぼ中央の日付付近に起 こる満月という現象が暦月中に2度も発生すると云うことはありません(暦 が半月狂ってしまうことになる)。 もっとも、本月と閏月を同じ暦月と数えるといった話、例えば五月と閏五月 はともに五月であるから1つの暦月と数える、なんていう禁じ手はなしとし てです。もしこれでよいのであれば、旧暦の閏月の数だけ、2度目の満月が ある暦月が出来る訳なのでその数は、閏月の出来る割合を考えればよいこと になるので、 閏月の出来る間隔 ≒ 19/7 ≒ 2.7年 (≒ 33ヶ月) となります。 最初の新暦の例よりは、ちょっとだけ「希な現象」ですね。 ◇やっぱり持ち越し「ブルームーン」 さて、ここまで書いてきましたが、大分長めになってきましたのでブルーム ーンの話は、やはり別に機会に持ち越しすることにします。 ちなみに、鈴木さんがメールの中でお書きくださった > 最近では、ひと月に満月が2回あることを「ブルームーン」 > というようです という定義の話であれば、本日の「新暦の1暦月に2度の満月があるとき」で 答えとなっているのですが、わざわざ「ブルームーンの話は持ち越し」とし たとおりで、これだけでは無い話があるからです。 ということで、本日の暦のこぼれ話はここまで。 ブルームーンの話は近いうちに。
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