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■「八月大名」と「二八月荒れ右衛門」 今年2021年は今日、9/7から旧暦の八月の朔日にあたりますので、旧暦の八 月や八月朔日にまつわる話を少々。 ◇「八月大名」の話 まずは目出度い話から。 旧暦が使われていた時代には「八月大名」という言葉がありました。 一年中、自然と向き合い、忙しい日々を過ごしている農家の人たちですが、 この時期は丹精込めた稲たちも大きく育って、後は刈り入れを待つばかりと なり、ちょっと一息。骨休めして、後は怖い台風さえ来なければ万々歳。ま るで大名のように安楽な日が過ごせる(大名は大名で大変だったでしょうけ れどね)月でした。 また、八月は農閑期となると云うことで、忙しい時期には行えない諸行事、 法事や嫁取りなどが集中するという月でもありました。こうした行事には祝 いの膳が並ぶわけですので、連日ご馳走がいただける、楽しい月であったこ とでしょう。 こうして生まれた言葉が「八月大名」でした。 ◇「二八月荒れ右衛門」の話 目出度い話の後はちょっと心配な話。 「二八月荒れ右衛門」の話です。 二八月荒れ右衛門とは、旧暦の二月と八月は嵐の多い月だということから嵐 への注意を喚起するために生まれた言葉です。旧暦の二月、八月はそれぞれ 春分、秋分の時期の月で季節が大きく変わる時期、天候が荒れる日が多い月 だったのでした。 既に書いたとおり八月は収穫の月でしたが、同時に台風が来襲する月でもあ り、十分な備えをしておかないと、折角一年丹精した稲が収穫目前で駄目に なってしまうこともあったわけです。 今でもこの季節には台風が日本に接近し、被害が発生する季節です 今なら、気象衛星の情報などで、台風襲来の時期や、台風の経路などはある 程度、事前に予測してそれに応じた対策もとれるようになりましたが、そん なものが無い時代には、風が強くなったなと思ったら翌日には立っているこ とも難しい強風豪雨となって、収穫前の稲をなぎ倒して行くといったことも あったことでしょう。そう考えると台風は、今の何倍も恐ろしい自然の災害 だったのです。 そういえば、嵐に注意すべき日とされた三大悪日、 二百十日(8/31)・八月朔(9/07)・二百二十日(9/10) はみなこの時期に集中しています。三大悪日の一つ、「八月朔」は八月朔日 の意味ですから、まさに旧暦八月の始まった今日も、三大悪日の一つだった わけです。 出来ることなら、今年の旧暦八月は「二八月荒れ右衛門」はほどほどで、楽 しい方の「八月大名」がいっぱいとなって欲しいところです。 そうなってくれるといいですがね。どうでしょう?
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