日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■「彼岸明け」はない? 本日、2021/9/26は彼岸の期間の終わりの日、「彼岸明け」の日です。 彼岸の期間は秋分の日を中日として、秋分の日とその前後3日を合わせた7日 間ですから、今日がその期間の終わりの日と言うことになります(今年の秋 分の日は9/23)。 本日の暦のデータでも、雑節の項目に 彼岸明 と書いております。が、彼岸には「明け」はないとも。 そんなわけで本日はこの話題です。 ◇彼岸は「明けない」の? 何かの本で、『「彼岸明け」ということばは使わない』という一文を読んだ ことがあります。その時は あ、こよみのページではつかってるけど、直さないといけないかな? と思ったので何となく覚えています(でもこよみのページを直すことはして おりません。理由は・・・単なる手抜きですけど)。 「なんで読んだか」がすぐに出てこなかったので、言葉の話と言えばまずは ここからと 「NHKことばのハンドブック」(第2版、NHK出版) を引っ張り出してきました。すると、「入り・明け」という項目に次のよう に書かれていました。 【入り・明け】 「寒の入り・寒の明け」 「土用の入り・土用の明け(一般には夏の土用だけ)」 「梅雨入り・梅雨明け」と使う。 ただし、「盆の入り(明け)」は使わない。 また、彼岸の場合は「入り」は使うが、「明け」は使わない。 とありました。おっと、お盆についても「入り・明け」は使わないと。 ただし、お盆の方については、以前気になって調べたことが有り、NHK放送 文化研究所のWEBサイトの「放送現場の疑問・視聴者の疑問」というページ に 「期間が3、4日と短いので「盆の入り(明け)」は、放送では使わない ことにしています。」 (8月の盆は「月遅れの」盆? https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/034.html ) こちらの方は、期間が短いので「放送では使わない」と言うことで、その表 現が正しいのか間違っているのかといった問題では無いようです。また、期 間の長さ問題なので「入り」も「明け」もどちらも使わないということなの で、納得もいくのですが、彼岸の方は違います。 彼岸の場合は「入り」は使うが、「明け」は使わない。 と、「明け」だけ使わないとあるので、これは何か理由がありそうです。し かし、ここまで読者(私のこと)の注意を引いておきながら、意地悪なNHK は、その理由を書いておいてくれませんでした。ああ、このままでは気にな って夜も眠れない・・・。 幸いにまだ朝で夜までには時間があるので調べてしまえば、夜は安眠出来る でしょうから、別の本も開いてみました。何冊か、それらしい本の頁をめく っていくとありました! ◇彼岸に「明け」はない? 本日の暦のこぼれ話のタイトルそのままの『彼岸に「明け」はない?』とい う小見出しのついた本が見つかりました。 季節の道草事典 (倉嶋厚著、東京堂出版刊行) あ、お天気博士、倉嶋先生の本ですね。 読んでみると倉嶋先生も私と同じ「NHKことばのハンドブック」の記述を読 んで疑問に思われたようです。皆、同じですね。 私と違うところは、気になってNHKの用語担当の専門家にお尋ねなさったこ とです。流石!(ま、私だと取り合ってもらえなかったかもですけど)。 件の担当者が言うには、 『彼岸の本来の意義は、かなたの岸の「悟りの境地」にとうたつすること であり、そこからさらに明けてしまうことはない。』 のだとか。そう言われてみれば確かに、悟りにの境地にたどり着いたのに その状態から「明ける」必要は無いですね。ある意味、論理的? とはいってもね、明けないはずの彼岸がまた半年後にはやってくることを 考えると、現実問題として存在する彼岸の期間の終わりをどう表現するべ きなのか、こよみのページのかわうそ@暦の立場では悩ましいところ。 彼岸の期間の終わり と書いてしまうのがいいのかな? でもなんか、無味乾燥でつまらないよ うな気がしちゃうな。困っちゃうな。 文才無く困ってしまうかわうそとは違う倉嶋先生はといえば、 『もっとも、人は毎年、春と秋の二回、彼岸に到達しようとしますから、 彼岸を目指して煩悩の川を渡り続けるのが人の一生であり、その意味で も「明け」はないのかもしれません。』 と解説の文章を締めくくっていました。流石・・・。 この説明通りだとすれば、秋の彼岸の最後の日である今日は、来春の彼岸へ の向けて歩み出す第一歩の日にもなるのでしょうかね。 さて、そんな秋彼岸の最後の日ですから、次の彼岸に向けて、とりあえず、 こよみのページの 「お彼岸の話」 http://koyomi8.com/reki_doc/doc_0730.htm の最後に、「彼岸に明けがない話」を追加することから始めることにしま しょう。秋の彼岸の期間が終わる、今日の間にね。
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