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■金盞香さく(七十二候 11/17~11/21頃)
 七十二候の中に「金盞香さく」というものがあります。
 今年、2021年でいえば11/17~21がその候の期間となります。

 七十二候は二十四節気を更に三分したものです。
 二十四節気は1年を24等分したものですので一つの気は15日程度。それを更
 に三分したものですので一つの候の長さは5日程となります。

 5日なんてあっという間ですから「金盞香さく」について、暦のこぼれ話で
 取り上げようかな・・・なんてぼんやりと思っているうちに気がつけば今日
 はその期間の最後の日。あわわぁ~、ということで慌てて書いております。

◇金盞香≠金盞花
 この候は本来は「金盞香」で「きんせんか さく」と読ませる(明治略本暦
 の読み)のですが、そのままではとてもそうは読めないでしょうからこよみ
 のページでは後ろに「さく」をつけて表示しています。ま、これについては
 多少悩んでいます。なぜかというと

  「金盞香」=「キンセンカ」=「金盞花」?

 と誤解されてしまいそうだから。
 一般に「キンセンカ」と呼ばれる花はキク科の「金盞花」。
 綺麗な花で、寒さに強く、冬に咲く花ですからこの時期の七十二候に取り上
 げられて違和感はないと思いますので、

  あ、金盞花を金盞香とも書くんだ

 なんて誤解させてしまいそうです。
 でも七十二候の「金盞香」は金盞花ではなくて水仙(スイセン)の花のこと
 なのです。

 金盞香で「きんせん かおる」とか「きんせん かんばし」のように読む方
 が誤解がなくてよいかななんて思うことも度々あるのですが、私が勝手に読
 みを決めるのもね。説得力が欠けるので、明治時代の略本暦の読みを標準と
 して使っています(権威主義? 虎の威を借るかわうそ?)。でも、誤解を
 助長しそうで。ということで悩んでいます。

 おっと、ここは「暦のこぼれ話」であって「かわうそのお悩み相談室」じゃ
 なかった。ということで 閑話休題。

◇「金盞」の名前の由来
 水仙は冬の寒さに負けず咲く花、いえ、冬の寒さこそが似合う花というべき
 でしょうか。美しい花なので庭などにも植えられるため、冬の時期ならどの
 地域でもよく見かける花ですが、自然に群生している場所というと、海辺に
 近い、風の強い場所が多いようで、伊豆半島や淡路島、越前岬などには有名
 な群生地があります。

 水仙の花は直径4~5cmの白い花被片と黄色の副花冠で形作られています。そ
 の花の形が「銀の台に金の盞(さかづき)をのせたようだ」ということで、
 「金盞銀台」という雅な名前をつけられました。ここから「金盞」が水仙の
 別名となりました。銀の台に金の盞をのせたようだといわれると、なるほど
 と思いますね。

 ついでにいえば、名前のことで悩みの種になっている「金盞花」の花も、盃
 のような形で朱金の色をしている花なので金盞花なんでしょうね。水仙と金
 盞花の花の形が違ってはいますが名前に「金盞」がついた理由を考えると、
 それぞれに納得できます。ま、だからといって七十二候の読みについての私
 の悩みがなくなるわけではありませんが。

 ちなみにですが、海辺に群生する水仙は日本水仙などと呼ばれるために、日
 本が原産の花のように思えるのですが、その生まれは地中海沿岸だといわれ
 ます。それが中国を経由して日本に伝えられた(あるいは、偶然漂着したも
 のが根付いたとも)いわれています。

 とはいいながら、その日本への伝来は室町時代以前といいますから、水仙の
 日本在住歴は 700年以上? もう「日本水仙」でいいかもしれませんね。そ
 れに、水仙の咲かない日本の冬なんて、私には想像も出来ませんから。

◇身の回りの「金盞香さく」
 さて、七十二候「金盞香さく」の期間の最後の日にこんな文章を書いている
 私まわりの水仙の具合はというと、昨日見たところでは、まだ葉っぱしか見
 えていません。花が咲くのはもうちょっと先でしょうかね?
 

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