日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■金盞香さく(七十二候 11/17~11/21頃) 七十二候の中に「金盞香さく」というものがあります。 今年、2021年でいえば11/17~21がその候の期間となります。 七十二候は二十四節気を更に三分したものです。 二十四節気は1年を24等分したものですので一つの気は15日程度。それを更 に三分したものですので一つの候の長さは5日程となります。 5日なんてあっという間ですから「金盞香さく」について、暦のこぼれ話で 取り上げようかな・・・なんてぼんやりと思っているうちに気がつけば今日 はその期間の最後の日。あわわぁ~、ということで慌てて書いております。 ◇金盞香≠金盞花 この候は本来は「金盞香」で「きんせんか さく」と読ませる(明治略本暦 の読み)のですが、そのままではとてもそうは読めないでしょうからこよみ のページでは後ろに「さく」をつけて表示しています。ま、これについては 多少悩んでいます。なぜかというと 「金盞香」=「キンセンカ」=「金盞花」? と誤解されてしまいそうだから。 一般に「キンセンカ」と呼ばれる花はキク科の「金盞花」。 綺麗な花で、寒さに強く、冬に咲く花ですからこの時期の七十二候に取り上 げられて違和感はないと思いますので、 あ、金盞花を金盞香とも書くんだ なんて誤解させてしまいそうです。 でも七十二候の「金盞香」は金盞花ではなくて水仙(スイセン)の花のこと なのです。 金盞香で「きんせん かおる」とか「きんせん かんばし」のように読む方 が誤解がなくてよいかななんて思うことも度々あるのですが、私が勝手に読 みを決めるのもね。説得力が欠けるので、明治時代の略本暦の読みを標準と して使っています(権威主義? 虎の威を借るかわうそ?)。でも、誤解を 助長しそうで。ということで悩んでいます。 おっと、ここは「暦のこぼれ話」であって「かわうそのお悩み相談室」じゃ なかった。ということで 閑話休題。 ◇「金盞」の名前の由来 水仙は冬の寒さに負けず咲く花、いえ、冬の寒さこそが似合う花というべき でしょうか。美しい花なので庭などにも植えられるため、冬の時期ならどの 地域でもよく見かける花ですが、自然に群生している場所というと、海辺に 近い、風の強い場所が多いようで、伊豆半島や淡路島、越前岬などには有名 な群生地があります。 水仙の花は直径4~5cmの白い花被片と黄色の副花冠で形作られています。そ の花の形が「銀の台に金の盞(さかづき)をのせたようだ」ということで、 「金盞銀台」という雅な名前をつけられました。ここから「金盞」が水仙の 別名となりました。銀の台に金の盞をのせたようだといわれると、なるほど と思いますね。 ついでにいえば、名前のことで悩みの種になっている「金盞花」の花も、盃 のような形で朱金の色をしている花なので金盞花なんでしょうね。水仙と金 盞花の花の形が違ってはいますが名前に「金盞」がついた理由を考えると、 それぞれに納得できます。ま、だからといって七十二候の読みについての私 の悩みがなくなるわけではありませんが。 ちなみにですが、海辺に群生する水仙は日本水仙などと呼ばれるために、日 本が原産の花のように思えるのですが、その生まれは地中海沿岸だといわれ ます。それが中国を経由して日本に伝えられた(あるいは、偶然漂着したも のが根付いたとも)いわれています。 とはいいながら、その日本への伝来は室町時代以前といいますから、水仙の 日本在住歴は 700年以上? もう「日本水仙」でいいかもしれませんね。そ れに、水仙の咲かない日本の冬なんて、私には想像も出来ませんから。 ◇身の回りの「金盞香さく」 さて、七十二候「金盞香さく」の期間の最後の日にこんな文章を書いている 私まわりの水仙の具合はというと、昨日見たところでは、まだ葉っぱしか見 えていません。花が咲くのはもうちょっと先でしょうかね?
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