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■冬至と影の長さ
 今日は冬至を過ぎて3日目。
 冬至を過ぎれば日は伸びて(太陽が昇っている時間が伸びて)、その逆に、
 ものの影の長さは短くなって行きます。

 影が短くなると言っても、真昼の影と夕方の影なのかでは条件が違いますの
 で、条件をそろえる必要がありますが、こうした場合に良く用いられる条件
 の一つに

  太陽が南中した瞬間(の影)

 というものがあります。南中というのは、天体が真南に見えることを指す言
 葉です。太陽が南中したとき、太陽の地平線高度は最も高くなり、その太陽
 が作るものの影は最も短くなります。この

  1日のうちでものの影が最も短くなる瞬間の影の長さ

 を継続的に記録してゆくと、その長さは季節によって変化するのが分かりま
 す。そして、その長さが最長となる日が冬至の日です(反対に最短となる日
 が夏至の日)。

 影の長さを測るというのは、精密な計測機器などが無い時代でも比較的容易
 に行える観測でしたから、昔々のその昔の大昔、暦を作る人たちもこの影の
 長さを測るという観測を行って、暦の計算の起点となる冬至や夏至の瞬間を
 求めていました。

 こんな話は、日刊☆こよみのページの読者の皆さんにとっては常識。釈迦に
 説法ですね。天体の動きや暦に興味を持っているという方なら、必ず一度は
 自分でも、この「影の長さの観測」を行ったことがあるでしょう・・・

  すみません、やったことありません! by かわうそ@暦

 と言うわけで、怠け者の私はやったことがありません。ごめんなさい。
 もう、昔々の人たちが沢山やってくれていたでしょうから、後の時代を生き
 る幸運を満喫して、古人達の得た結果を有り難く使わせていただいている次
 第です。

 そんなわけで、現実の苦労をしていない私ですが、古人達の苦労を偲んでみ
 ようと、計算の上で確認してみました。冬至前後でどれだけ影の長さが変化
 するのかを。

◇冬至を過ぎると影はどれだけ縮む?
 怠け者の私でも、計算で確認するくらいは出来ます。
 そして、計算した結果から、簡単に測れるものなら、いつかは本当に影の
 長さを測ってみようと思うかも知れませんからね。
 そんなわけで、早々に計算してみました。

 計算条件は北緯35.68°、東経139.75°(東京)。ここで 1.0mの棒を垂直に
 立て、太陽の南中の瞬間の影を測るというもの。計算の期間は2021/12/22~
 2022/1/1までです。計算の結果は次の通り

 月/日 影の長さ  冬至の日の長さからの変化
 12/22 1.67212 m   0.00 mm
 12/23 1.67163 m  -0.49 mm
 12/24 1.67062 m  -1.50 mm
 12/25 1.66910 m  -3.02 mm
 12/26 1.66706 m  -5.06 mm
 12/27 1.66450 m  -7.62 mm
 12/28 1.66144 m -10.68 mm
 12/29 1.65788 m -14.24 mm
 12/30 1.65383 m -18.29 mm
 12/31 1.64928 m -22.84 mm
  1/ 1 1.64426 m -27.86 mm

 こうした実験をする場合には「有効数字」というものを考えるべきで、影の
 長さを有効数字6桁で表すというのは過大に過ぎるのと思いますが、計算し
 てみたら、このくらいまで表示しないと「差が出ない」ことが分かったので
 仕方なく・・・。確かめて見たら、確かに影の長さは冬至の日以後、短くな
 っては行くのですが、冬至から3日経った今日でもその変化はわずか 3mm。
 冬至の翌日なんか、0.49mm。

 うーむ、この長さの変化を測れるかというと、かなり難しい。0.49mmという
 差の小ささもそうですが、これくらいになると棒の影の先端が、わずかボケ
 て、ぼんやり見えることも問題になります。3日後の 3mmの差だって実際に
 測るとなると心許ない差です。流石に10日も経って年が明ける頃になれば影
 の長さの差は2~3cm程にもなるので、実感出来るようになるかなと思います
 が、今のところはまだ影の長さの変化を実感出来るところまでは、行きませ
 んね。冬至の日からの影の長さの変化を計算してみて思うことは


  影の長さの変化を測って冬至の日を求める

 なんて、さも簡単なことのように、当たり前のことのように説明されること
 も、実際にその観測をするとなったら大変。単純に棒を立てて影の長さを測
 ればいいというものではないと言うことが分かります。わずかな影の長さの
 変化を捉えるための工夫や、何日も何日も、あるいは何年も何年も観測を続
 ける必要があることも分かります。

 昔々の大昔、そんな根気のいる観測を続けて暦を作ってくれた先人達の苦労
 に思いを馳せつつ、本日の暦のこぼれ話を終えることにします。
 さてと、にぶい私が影の長さの変化に気付くのは冬至の何日後かな?

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