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■日本の旧正月と中国の春節の異なる年
 昨日の暦のこぼれ話

  「旧正月」と「重ね正月」

 で、日本の旧暦元日と中国の春節の日付が異なる場合があることに触れた
 ところ、この件について読者の方が「気になる」とTwitterでつぶやいてお
 られましたので、すっきりして頂くためにどれくらい違いがあるかを調べて
 みました。

◇「新月」の日付の違いが原因となる年
 まずは「新月」の日付の違いが原因となる年について1950~2050年の間で調
 べてみました。結果は以下の通り。

  暦年 日本 中国
  1954 2/04 2/03
  1958 2/19 2/18
  1966 1/22 1/21
  1988 2/18 2/17
  1997 2/08 2/07
  2027 2/07 2/06
  2028 1/27 1/26

 最近はあまりなくて前回は1997年、次回は2027年となりそうです。
 このずれの原因の大部分は昨日も書いたとおり、日本と中国との1時間の時
 差の為です。

  日本で0時を迎え、日付が切り替わる瞬間は、
  中国ではまだ前日の23時

 ということがあると、この瞬間から1時間以内に新月の瞬間を迎えると、中
 国の春節の日付が日本より1日早まることになります。なぜなら、日本や中
 国で使われてきた太陰太陽暦の暦月の始まりは、新月の瞬間ではなく

  新月の瞬間を含む日

 だからです。例え新月の瞬間が 23時59分59秒であっても、新月の瞬間を含
 む日ですから、その日の0時まで遡って考えることになります。実例として
 2027年の旧暦での最初の新月を考えてみます。この新月の瞬間は

  日本 2/7 00時56分
  中国 2/6 23時56分

 となります。1時間の差がありますが、これは日本と中国との時差1時間によ
 るもので、新月の瞬間は日本でも中国でも同じです。

 さてこの例では日本の日付は2/7,中国の日付では2/6と異なっていますが、
 これがそのまま、日本の旧暦元日と中国の春節の日付の違いとなります。
 (「日本の旧暦の元日」ではくどいので、以下は便宜上「日本の春節」のよ
 うに表現します。あくまでも便宜上です。悪しからず)。

 前述した日本と中国の春節の異なる年 7回は何れも新月の瞬間を迎える瞬間
 が日本時0時~1時の間にある年です。この場合は必ず中国の春節の日付の方
 が日本の春節より1日早いというパターンになります。

 また、この原因によって日本と中国の春節が異なる年が現れる頻度は1日24
 時間の内の、先に書いた1時間の間に新月の瞬間を迎える場合ですから

  1 / 24 ≒ 4.2%

 ということになります。
 今回調べた結果は101年間で7回ですから、その割合はおよそ7%とやや多め
 でした。

◇「雨水」の日付の違いが原因となる年
 「新月の瞬間」と同様に、もう一つ旧暦の正月を定める要素となる二十四節
 気の「雨水」の節入りの瞬間も、現象としては地球上のどこでも同じ瞬間で
 すので、時差の影響で日本と中国で日付が異なる場合があります。

 もし、雨水の日付が異なる年、その雨水がどの暦月(新月を含む日から次の
 新月を含む日の前日までの期間)に入るかによっては、日本と中国の春節が
 まるまる1ヶ月ずれてしまう可能性もあります。

 1950~2050年の間で見ると、日本と中国とで雨水の日付が異なる年が 3回
 (1960,1993,2026年)ありますが、この3回とも雨水の日付が変わっても、
 暦月を跨いだ移動はありませんでしたので、雨水の日付の違いが原因となっ
 て春節の日付が変化することはありませんでした。

 こうしたことが起こる頻度を考えると、雨水が日本の正月の元日の0~1時の
 間に節入りを迎える必要がありますから、ざっと計算すると

  1 / 24 / 29.5 ≒ 0.14%

 となります(3番目に登場した 29.5は平均朔望月の日数)。大体700年に1度
 あるかないかというかなり珍しい現象となります。
 (上記の計算は、頻度を示すための少々粗い計算ですので、その点はご了承
 ください)

◇その他の問題が原因となる年
 ここまで、新月の日と雨水の節入りの日が原因となる例を考えましたが、他
 にも日本と中国の春節の日が異なる原因となるものがあります。

  a.置閏法の違い
  b.新月の瞬間、雨水の瞬間の計算方法の違い

 日本と中国では旧暦(あるいは農暦)と言っても、準拠している暦自体が異
 なります。日本のそれは天保暦であり、中国のそれは時憲暦です。準拠して
 いる暦が異なるわけですから、当然、閏月をどのように配置するかを決める
 置閏法も異なります(a のパターン)。

 ですから、置閏法の違いが原因となって春節の日付が異なる場合も考えられ
 るわけです。それは分かるのですが、その影響がどれ程かというと、これを
 定量的に示すのは困難です。何せ、比較するべき置閏法について、天保暦は
 あやふやな部分があり、比べたくても何をどう比べたらいいのかという問題
 があるのです(天保暦のこのあやふやな部分が2033年問題を引き起こしてい
 ます)。

 そんなわけで、この影響の頻度を示すことは出来ませんが、まあ前述の新月
 や雨水の節入り日の違いが原因となるものと比べれば、頻度はかなり低いこ
 とだけは推測出来ますので、無視しても大丈夫かな?

 b のパターンについてはというと、旧暦は天保暦や時憲暦に準拠していると
 いいながら、現在の新月の日や雨水の節入り日の計算に使われる天体暦は本
 来のものではなく、現代天文学の知識によって作られたものが使われますの
 で、日本と中国との計算結果の差は、まったく無視してもよいレベルでしょ
 うから・・・無視しましょう。

 ということで「その他の問題」については頭を悩まさなくてもよさそうだと
 いうのが私の考えです。

◇ということで「結論」
 ということで、結論としては日本と中国で春節の日が異なる年を知りたけれ
 ば「新月の日」が異なる年を探せばほぼ完了。心配症の方は念のため雨水の
 節入り日もチェックしてみるということでよさそうです。

 さてさて、次に日本と中国の春節の日が異なる年は計算上(私の計算)は、
 2027年。その年を楽しみに待つことにしましょうか(その時までこの話を覚
 えていてくださったらね)。

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