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■地久節に菱餅の話
 本日は 3/6。
 今日の記念日を見ると昭和天皇の皇后、香淳皇后陛下の誕生日でした。
 帝国憲法下では天皇陛下の誕生日は「天長節」という祝日であったことはご
 存じの方も多いと思いますが、皇后陛下の誕生日を「地久節」と読んだとい
 うことをご存じの方はあまり多くないのではないでしょうか?

 天長節、地久節の呼び名は古代中国の思想で天は男子の徳を、地は女性の徳
 を持ったものだという考えから生まれたものです。

◇ひな祭りの餅はなぜ「菱餅」?
 ここで突然ですが、つい最近ありました上巳の節供(ひな祭り)の供え物と
 して欠かせない菱餅の形の話です。
 なぜ、地久節の日にいきなり菱餅の話をするのかというと、菱餅の形は女性
 の徳を持つという大地をかたどったものだからです。

  え、大地って丸いよ? だって「地球」ってくらいだからね

 と現代人ならいいたいところでしょうが、ここでいう「大地の形」というの
 は、これまた古代の中国で考えられたものですのでご容赦ください。

 中国古代の伝説では、天は丸く大地は四角いものと考えられていました。
 そして天は男子の徳、地は女性の徳を持ったものと考えましたので、女児の
 節供である雛祭りの餅は、女性の徳をもった大地をかたどって菱形に作るの
 だそうです。

 ついでながら、では天の徳を持った男の方はというと、男児の節供となって
 いる端午の節供に欠かせない粽は、天をかたどって丸く作るものだったとの
 こと。なるほど(ただ、私の思い描く粽は細長く巻かれていたけど?)。

 そんなことを地久節だったこの日に思い出しましたので、かなり無理矢理、
 菱餅の話につなげてしまいました。

 とこれだけでは、いささか短すぎるこぼれ話なので、ついでに菱餅について
 のその他の話も書いてしまいます。

◇菱餅の色は三色?
 現在、雛祭りにつきものの菱餅といえば、大体三色と相場が決まっているよ
 うです。地方によっては、四色とか五色もあるそうですが、ここではよく見
 かける三色の菱餅から話を進めます。

 お雛様の飾り付けとして欠かせない存在である三色の菱餅、皆さんもきっと
 今年も何処かでご覧になっていることでしょう。この三色って何色だったか
 思い出せますか?

   紅・白・緑

 というのが大体定番の三色。
 おそらく「紅」は桃の花を、「白」は雪を、「緑」は草を表しているのでし
 ょう。冬が終わって草が育ち、花が咲く季節のお供え物としてはぴったりの
 ように思えます。

 雛祭りの菱餅は三色が、昔からの伝統かななんて思っていたのですが、調べ
 てみると意外や意外、菱餅が三色になったのは明治に入った頃だとかで、そ
 れほど長い歴史があるわけではないいようです。

◇ほんとは二色
 では、三色の菱餅になる以前は何色かと調べてみると、これは白と緑の二色
 だったようです。
 白は普通の白い餅。緑は草餅の色です。
 この二色の餅を、

  草餅・白い餅・草餅

 と三枚合わせに重ねたものが雛祭りの菱餅でした。
 草餅は別名よもぎ餅とも呼ばれるように、現在この緑の色を出すものはよも
 ぎです。よもぎは邪を祓う植物とされています(端午の節供などでも登場し
 ます)から、よもぎ餅を供えることには邪気を祓うという意味がありそうで
 す。

◇草餅の草は、ハハコグサ
 この邪を祓う植物を入れて草餅を作るということ自体は不思議ではないので
 すが、中に入れる邪を祓う植物は昔から蓬だったわけではなく、当初は母子
 草(ハハコグサ)であったといわれます。
 母子草とは春の七草の中にある「御形(ゴギョウ)」のことです。

 元々の雛祭り(上巳の節供)の日には不浄を洗い流すため海や河に出掛けた
 のですが、そうして出掛けた場所で草餅に使う母子草を摘んで帰ったのでし
 ょう。後世、母子草を入れて撞いた草餅は「母」と「子」を撞くかのようで
 縁起がよくないと考えられるようになり、何時しか母子草に代わって蓬が草
 餅の中に入るようになったようです。

 本日は、記念日の項目の「地久節」からの連想で、ほぼ「菱餅の話」となっ
 てしまいましたが、まあこぼれ話ですので脈絡がない点はお許しください。
 以上、本日の「地久節に菱餅の話」でした。

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